約 5,564,042 件
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/27363.html
アクア・チェッカー UC 水文明 (3) クリーチャー:リキッド・ピープル/カイナンバーズ 2000 ■S・トリガー ■ディスプレイ―このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手に自身の手札を1枚選ばせ、そのカードを表向きにしてもよい。そのカードが表向きで相手の手札にある間、そのカードとコストの同じ相手のクリーチャーは攻撃できない。 作成者:Y DMVT-01「戦滅編 第1章 破滅の序章」に登場するリキッド・ピープル/カイナンバーズ。新能力であるディスプレイがついた、《アクア・チャージャー》の完全上位互換である。ディスプレイで相手の手札を1枚オープンさせつつ、そのコストのクリーチャーは攻撃できなくなるが、相手がその手札をマナにしたり、使ったりすれば効果は失われるため、ほぼオマケである。 フレーバーテキスト カイナンバーズは、どうしても滅びを受け入れられなかった。 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ufc246fight/pages/10.html
https //lookingforclan.com/clans/ufc-246-live-conor-mcgregor-vs-donald-cerrone-live-stream-ufc-246-full-fight https //lookingforclan.com/clans/ufc-246-live-stream-ufc-246-live-streaming-ufc-246-live-stream-mcgregor-vs-cerrone https //lookingforclan.com/clans/mcgregor-vs-cerrone-ufc-246-live-stream-ufc-246-live-streaming-ufc-246-fight-live https //lookingforclan.com/clans/mcgregor-vs-cerrone-live-ufc-246-live-stream-2020-ufc-246-live-tv https //lookingforclan.com/clans/ufc-246-live-conor-mcgregor-vs-donald-cerrone-live-stream-ufc-246-full-fight-0 https //lookingforclan.com/clans/mcgregor-vs-cerrone-ufc-246-live-stream-free-online-hd-live-stream https //lookingforclan.com/clans/ufc-246-live-stream-mcgregor-vs-cerrone-live-stream-online https //lookingforclan.com/clans/how-watch-ufc-246-live-stream-mcgregor-vs-cerrone-anywhere-weekend https //lookingforclan.com/clans/watch-for-free-ufc-246-mcgregor-vs-cerrone-live-stream https //lookingforclan.com/clans/ufc-246-live-stream-mcgregor-vs-cerrone-ufc-245-streaming https //lookingforclan.com/clans/how-watch-ufc-246-live-stream-mcgregor-vs-cerrone-full-fight-live-online https //uffstv.xyz https //dadsports.co https //momtv.xyz https //onetv.xyz https //streamttv.online
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/630.html
BRIGHT STREAM(2) ◆gry038wOvE ──昼飯を食べた後、各々は部屋に戻った。 それぞれの部屋が近いので、そこまでで別行動を取る者もなく、アースラの自室に入るまで適当に話しながら、歩いて行く。 広く設備の整った自室に、暁などは感激しており、逆に良牙は落ち着かなさを覚えている。そんな風に、それぞれ反応は違っていたのだが、その部屋をだんだん散らかし始めるくらいの時間が経って行こうとしていた。 ドウコクの部屋、外道シンケンレッドの部屋、蒼乃美希の部屋は未だに空室だ。 とはいえ、その内、二つは使われる機会がないだろう。──その二部屋のうち、ドウコクの部屋は、既にそれぞれが勝手に荷物置き場にしてしまっている。 今も、ドウコクの部屋に涼村暁は荷物を取りに行こうとしていた。 この場ではデイパック内の確認が成され、「危険物」(モロトフ火炎手榴弾など)、「変身道具」(ガイアメモリなど)、「クルーの所持品」(のろいうさぎなど)、「食糧・飲料水」を除いた、比較的危険性のない支給品が置かれている。 中には、誰かの遺品と呼ぶべき物もある。──誰の支給品か判然としていなかった物も、主催側の中継放送で表示されたデータで全て明かされ、どの支給品が誰の物だったのかはわかっていた。 しかし、暁は特に気にしていなかった。ゲーム機や玩具などもハズレで支給されていたので、それらに何か使い所がないか確認しに来たのである。 ほとんどの支給品は、室内に飾られるように並べられている。 ──それを何となく、見ていた時、部屋の白壁に一人の男が凭れかかっているのを暁は確認した。 「うわっ、びっくりした!」 暁も不意に見つけたので、思わず声をあげて驚く。自分より先にこの部屋に入っていた人間がいたとは、まったく気づかなかったのである。 自分の部屋に戻ってからすぐにこの部屋に来た感覚だったので、暁も衝撃だ。 ──そこにいたのは、涼邑零であった。 「──おい、暁。あんた、何か隠してないか」 零は、表情も変えず、暁の方を見もせず、開口一番にそう尋ねた。 先ほど、食堂でのヴィヴィオとのやり取りによって、暁に、どこか帰る事に対する陰のようなものが感じられたのを零も忘れてはいない。──あれが、何となく、零を暁に接触させようとしたのだった。 それだけではない。暁に関しては妙な事がもう一つあったのだが、これまで何となく、誰もそれについて触れる事がなかったのだ。 「何だよ、急に」 「……みんな言わないが、なんで主催は第二ラウンドでお前の名前だけ呼ばなかったんだ?」 まずは、主催者が「第二ラウンド」と称して参加者の追跡を行った際に、暁の事は一切触れなかった点だろう。「ターゲット」として呼ばれた生還者の名前の中に、生存者の中で唯一、暁の名だけがなかった。 主催側は何としても生存者を全員捕まえたかったはずだ。 孤門のようにあちらの宇宙で行方が知れなくなっている者はともかく、他の生存者同様、普通に生還していたはずの暁の名が呼ばれなかったのは、不自然極まりない事実である。 「呼び忘れたんだろ」 「そんなわけあるか」 「じゃあ、呼びたくなかったんだろ」 ──暁が答えをはぐらかしているのは、零にもよくわかった。 しかし、はぐらかす中にもどこか後ろめたさのような物があるように感じられ、零も暁も少し顔色を険しくする。 呼び忘れるはずがない。世界を掌握するのが目的な中で、たった八人ほどの生還者を呼ぶのに呼び損じが出てくるはずはない。──相手も組織立って行動しているので、そんなミスに指摘が来ないはずもなかった。 呼びたくなかった、というのは更にその上を行く暴論だ。 二人がにらみ合っていると、そこに、零の指にはめられた魔導輪の声が聞こえた。 『呼ぶ必要がない……と思ったんだろうな』 ザルバが口にしたのは、零と同じ結論であった。それしかありえなかった。 そして、呼ぶ必要がない状況──というのは、いくつか挙げられる。 暁が既に捕えられている場合。暁が死亡している場合。暁が主催側の協力者であった場合。……など、様々に存在する。しかし、見たところ、そのどれでもない。 少なくとも、殺し合いの最中では、暁が不審な行動を取った事はほとんどなかったし、良くも悪くも隠し事や裏表と無縁な人間だ。石堀と違い、算段などに似合わないのがよくわかる。 「……ッ」 暁には図星だったらしいが、口を開く様子は一切なかった。まるで頑固な子供のように固まり、そこから嘘の言葉で飾ろうと頭の中で屁理屈を組み立てているようだった。 そんな様子を見ていると、零の方が、溜息をついて折れてしまった。 これ以上、仲間内で悪い空気を作るのは良くないだろう。──二人ならば大丈夫だろうと思って、こうして待ち伏せていたのだが、結局、暁にはどうしても口にしたくない事があるらしい。 「まあいいよ。別に、今更あんたを疑ってるわけじゃない。でも、何か思い悩む事があったら、何でも俺たちに言えよ……って思ってさ」 こういう、普段お気楽な人間ほど、内心では深い陰我を抱えているという事もある。 周囲に気を使い、あくまで重い空気を作らずに振る舞う中で、実は溜めこまれた悲しみや怒りを抱えている事がないとも言いきれない。 少なくとも、それが邪気のある物ではない事くらいはわかっているつもりだ。 ──だから、せめて、それを告げられる相談相手くらいは引き受けてやろうと思った。 すると、暁はようやく口を開いた。 「……じゃあ、俺の悩みを一つだけ」 深刻な顔で切りだした暁は、次の瞬間、普段通りのにやけ面で零に訊いた。 「艦長の八神はやてちゃんだっけ? あの子を落とすには、どういう──」 ◆ 高町ヴィヴィオとレイジングハートと響良牙が来ていたのは、アースラの内部にある訓練室であった。トレーニング機材が置いておらず、あくまで今は武道の為の道場のような内装の場所だ。良牙がその師範のように、神棚の前で多くの人間に向きあっている。 一番前で良牙に向き合っているのが、ヴィヴィオであった。ひときわ真剣な表情でヴィヴィオが良牙を見つめた。 良牙の方が委縮してしまいそうになるほどだった。 (まさか、こんなにいるなんてな……) 良牙の前にいる相手たちは、アースラのクルーの中でも、積極的に格闘技を習おうとする者たちだ。ヴィヴィオの友人であるリオ・ウェズリーやコロナ・ティミルほか、ストライクアーツを習う子供たちだけでなく、ザフィーラやノーヴェ・ナカジマなどのように彼女たちの師匠筋にあたる者も、興味深そうに良牙の武術を見てきたのである。 変身ロワイアルの映像の中で、魔力の適性がないにも関わらず、魔術に近い事をやってのける良牙の姿に呆気にとられた者も少なくなかったのだろう。 早乙女乱馬、明堂院いつき、沖一也……など、元々、あの殺し合いでは武道に携わる人間も多かったが、結局、そこから殺し合いの中で残って来たのは良牙とヴィヴィオだけだ。この世界の人間の中でも、武芸家たちが彼の戦法に興味を覚え、ヴィヴィオやはやての説得で、空いた時間に少しだけ教える事にさせられたのだ。 良牙は、決して乗り気ではなかった。良牙のそれは、独学で覚えてきた武道だからだ。彼らに教えるという事が少々難儀であるのはわかっていたし、こうして師匠のような扱いで講演するのも自分の柄ではない。何を教えて良いのやら、という気持ちだ。 しかし、ヴィヴィオが乱馬と長い間同行していた事を知っていた良牙も、良牙が乱馬の友人である事を知っていたヴィヴィオも、いつか互いに対して何か影響を与えたいとは思っていたのだろう。 そのチャンスが巡ってきた時であったので、良牙は躊躇いつつも、こうして三時間だけ「先生」をやってみる事にしたのだ。 「それじゃあ、良牙さん……お願いします!」 ヴィヴィオが、良牙を促すように言った。 良牙は、指をぽきぽきと鳴らした後で、首をまた横に振るって、少し低い音を鳴らした。そんな風に体中の鈍りを確かめる動作をしながら、彼は言う。 「任せとけ。とりあえず教えられる事は全部教えてやる。……出来ない奴は、今の自分の戦法をそのままに。──ここで教えた事は全部忘れた方がいい」 ──ひとまずは、ヴィヴィオに良牙の持っている技を伝授する所から初めていこう。 教える対象は、とにかく、ヴィヴィオに絞るつもりで教えてみる事にした。──他の者たちは、参考程度に二人の話を聞きながら、真似てみるのが良いだろう。 ヴィヴィオは、一也の使う赤心少林拳も早くにその型に近い物を修得するなど、良牙の目から見ても格闘に関するセンスは非常に高いといえる少女だ。ベリアル戦までに完成させるのは難しいかもしれないが、どうやら変身ロワイアル終了後も精力的に梅花の型の修練をしてみているらしい。 彼女の場合は、己のスタイルを忘れず、あくまで技の一つのバリエーションとして覚えておいた方が良さそうだ。 「──まず、獅子咆哮弾の使い方だ。ただし、これは不幸になるほど強くなる禁断の技だ。強さを求めて不幸を追わないように気を付けろ」 「「「はい!」」」 それは、誰もが最も気にしていた技だろう。 本来、リンカーコアを持たず、魔術の適性もないはずの彼が、あんな衝撃波を掌から出す事に違和感を持たない人間はいない。彼らの世界の人間は総じて神がかり的な戦闘能力を持っているようだが、その中でもとりわけ不思議な原理だ。 「じゃあ、とにかく基本から。……最初に、自分の中で嫌だった事を考えてみたり、思い出したりしてみろ」 「「「は……はい!」」」 それぞれが良牙の言葉と共に、全身に力を溜めながら、それぞれ嫌な事を考えてみた。 頭を唸らせ、友人の死や、己の過去の過ちを再度、鮮明に思い出す。──気分は曇っていく。まさしく、タイミング的にはこの獅子咆哮弾に向いた時期だったのだろう。 気が重くならない人間は、この状況下、どこにもいない。ただし、ある種集中力が試される場面でもあった。 「──そして、獅子咆哮弾!!」 「おおっ!」 良牙が叫ぶなり、良牙の組み合わさった掌から、小さな光が発射された。 不幸の技が良牙の手から表れ、周囲から歓声が上がる。ヴィヴィオ以外、生の獅子咆哮弾を見たのは初めてだった。 ただ、威力を弱めに調整し、考えた不幸も、「チャーシュー麺を目の前で食われた事」くらいに抑えておいたので、この場に被害はなく、獅子咆哮弾も何にも当たらず空中で消える。まるで空気の束が一斉に外に放出されたように、透けた音が聞こえた。 「……と、叫ぶ。ほらできた」 歓声は止んでいなかったが、良牙がそう教えると、続けて、それぞれが外壁に向けて固く構え始めた。──真剣な声で、それぞれが叫ぶ。 「「「獅子咆哮弾!!」」」 ………ヴィヴィオを含む全員が声を重ねて、獅子咆哮弾を放とうとするが、その後にあったのは、何も起きない静寂だった。 全員が掌を外に向けたまま、あるポーズのまま止まって、数秒が経過する。 「……」 誰もが、良牙の方を不安そうに見つめた。 ヴィヴィオやコロナはまだしも、ノーヴェやザフィーラですら全く出来る様子がないのだ。そうなると、自分たちより指導者の良牙に問題があるのではないかと思ってしまう。 ノーヴェやザフィーラはあまり気にしていないようだが、至極真面目な弟子たちの様子に少し照れているようだった。 「……あの。できませんけど」 ヴィヴィオが、その場の凍った空気を暖める為に、良牙に訊いた。 良牙の言った獅子咆哮弾が出来る人間がこの場には一人もいない。 だいたいが、考えてみると、嫌な事を考えて獅子咆哮弾と叫んだだけで発動してくれるのなら、今までに彼以外の習得者が出てもおかしくないはずである。 あまりにも簡単で雑なやり方に、良牙への不信感が一気に高まってくる。 「……わかった。もうちょっと簡単な所から行こう。──と思ったが、爆砕点穴は難しいな。あれの修行は辛いし、マトモなら死ぬかもしれない。だとすると、俺の技は──」 爆砕点穴の修行は、突き指になるか、指の骨が折れるかという事が確実に起きる。 巨大な岩石に叩きつけられて生きていられるくらい元が頑丈でなければ修行自体が不可能だし、それをヴィヴィオやリオやコロナのような少女にやらせるわけにもいくまい。 だとすると、他にできそうな技はないだろうか。 (な……ないっ!!) 考えてみると、良牙には技のバリエーションがそこまで多くはなかった。 武器を扱うくらいの事なら得意だが、デバイスを持ち、それを使いこなす彼女たちに対して武器の取り扱いを教授できるほど良牙は偉くはない。 しんとした静寂が流れてくる。──だんだんと、周囲が獅子咆哮弾以外にほとんど技がない事を察し始めたのだろう。 「……あの、一応、無差別格闘早乙女流の技のデータをお借りして、それを持ってきたんですけど、使いますか?」 ヴィヴィオが、良牙の近くに寄り、フォローを入れるようにそう彼に囁いた。 早乙女流の秘伝書の復元版がヴィヴィオの手に握られている。どこで取り寄せたのかはわからないが、アースラが何度も時空を超える中で玄馬から受け取ったのかもしれない。 「ん? 乱馬たちの……? どれ……ちょっと見てみるか」 良牙はそれをヴィヴィオから借りて、少々見てみた。 一応、乱馬が無差別格闘早乙女流を名乗り、乱馬の父がその元祖である事は何となく知ってはいるものの、その全貌は、今のところ良牙にもよくわかっていなかった。 元々、頼る気もなければ、それを盗む気も対策する気もなかったので、これまで乱馬たちの技を気にした事はほとんどないのだが、乱馬の死によって後継者もいなくなったようなので、とりあえず目を通すくらいはしてやりたいのだろう。 ムースから技を一つ譲り受けたように、一つくらいは何かベリアルの撃退に役立ててやろうと思ったのかもしれない。 猛虎落地勢──土下座する。 敵前大逆走──逃げながら頑張って対策を練る(知ってた)。 魔犬慟哭破──相手の攻撃が届かないところで相手の悪口を叫ぶ。 ¥(かねくれ)──金銭を要求する。 胸囲掌握鷹爪拳──女性の胸を後ろから掴む事で一時的に動きを止めさせる。 地獄のゆりかご──相手に抱きついて頬ずりする事で不愉快な思いをさせる。 ざっと見たところ、無差別格闘早乙女流の技としてあるのはそんな物だった。 その殆どは、攻撃でも防御でもなく、もはや戦闘ですらない技ばかりだ。 良牙とヴィヴィオは、あまりに酷すぎる早乙女流の技を前にして、唖然として顔が一瞬、「へのへのもへじ」になってしまった。 ──だが、すぐに正気を取り戻した。 「なんだこのスチャラカな奥義は!!」 「あーっ! 破らないでくださいっ!! まともな物もあるんですから!! ほら!!」 ヴィヴィオも、それの殆どがまともでない事はわかっていた。それどころか、正当な後継者の乱馬ですら一部の技に対しては呆れてばかりである。 中には、乱馬も一目を置く海千拳と山千拳も存在しているのだが、それは邪拳として葬り去られており、山千拳の秘伝書が一つだけヴィヴィオの手元に残っているのみだ。 ヴィヴィオは、慌ててそちらを良牙に手渡した。 「……なんだこれは」 「山千拳の秘伝書だそうです。なんでも、封印された技だとか。私の支給品でした」 「なるほど……」 良牙はそれを見て、周囲に人がいるのをすっかり忘れ、一人で頷いていた。 獅子咆哮弾の秘伝書と大きく違うのは、あれに比べて大分丁寧に内容が書かれている事だろうか。 ──いや、確かにそれが強力な技なのはわかるのだが、もしこの特訓をすれば、ここにいる誰かを殺めかねず、また、このアースラさえも壊してしまいかねないリスクがあるのが、良牙にはわかった。 「……わかった。──だが、これも教えるわけにはいかねーな」 封印された邪拳をこれほどの相手に教えるわけにもいかず、良牙もそれは諦める。 ……となると、やはり良牙は“気”について彼らに教授するしかないようだ。もしかすると、魔力と似通った性質を持つかもしれないので、時間をかけてみれば彼らは素早く飲み込む事だって出来るかもしれない。 そう考えた上で、良牙は──再度、獅子咆哮弾について、目の前の人々に原理を伝え始めた。 ◆ 他の生還者のほとんどが外を出歩いている中、花咲つぼみの部屋を訪ねてきたのは、佐倉杏子であった。つぼみも今は特に外に用事がなかったので、部屋で惰眠の沼に陥りそうになりながら、ベッドに転がっていただけだ。 丁度良かった。──勉強どころではないし、アースラの乗員も殆どは知らない人で話しかけるのに勇気を要する。こうして、つぼみにしては珍しい「退屈」の時間を埋められる相手が訪問したのは、恰好の時間潰しになる。 「杏子さん、もう少しでお茶が入りますからのんびりしていてください」 今は、杏子の訪問に対して、つぼみはとりあえずお茶でも振る舞おうと、Tパックの入った湯呑に沸騰したお湯を注ぎ込んでいる。湯気が立ち、緑茶の香が彼女たちのいる一角に広まって来た。 ドーナツならば残っている分も結構多いので、二人はそれを少しずつ食べ始めていた。美味しいのは確かだが、既にクルーも空き始めている。──が、二人は、雑談でもしながら食べた。 これから向かう場所を踏まえなければ、何て事のない友達同士の訪問とさして変わらない光景だった。 「なぁ、美希って無事かなぁ」 杏子も、他のメンバーが揃いも揃って不在なのでここに来ただけで、別段、用事らしい用事もなく、ただとりあえず、何となく話題でも挙げてこの場を繋ぐ為にそんな事を呟いたのだ。漫画本の一冊でもあればそれを手に取って読みふけるかもしれない。──ただ、今口にしたように、美希の事が不安なのは事実だった。 そんな杏子の無意識の不安に対して、つぼみは、ドーナツをとりあえず平らげて、口の中のドーナツをお茶で流してから答えた。 「……無事を信じるしかありません。それに、きっと生きています。これだけ頑張って探しているんですから、きっといつか見つかるはずです」 「ああ。でも、こっちも探してるけど、ベリアルたちも探してるんだよな」 それは、杏子らしからぬ後ろ向きな発言に感じられた。──今の彼女は、もう少しポジティブであったと思う。 ただ、かつてのような心よりの心配というほどでもない。それは、やはりこうして、美希と孤門を除く生還者全員がそれぞれの世界で守られ、この場に帰ってきているという事実があるからだろう。 それでも心の中に不安が大なり小なり浮かんできてしまうのは仕方のないかもしれない。 「──それに、あたしたちも、美希ももう変身できないし」 その事実が、ネックであった。 つぼみと杏子と美希に共通するのは、元々持っていた変身能力も、あの場で得た変身能力も奪われているという事だろう。 唯一それを破る手段がT2ガイアメモリなどのアイテムであるが、それらの道具の危険性は高く、極力使うべきではないとされている。背に腹は代えられないとはいえ、それらは危機的状況に至ってようやく使用を許される者だと言えるだろう。 そして、美希の場合、最終時点でガイアメモリは所持しておらず、回収したメモリの殆どがアースラに保管されている以上、彼女は丸腰というわけだ。 そこを狙われれば一たまりもない。 「そう、ですね……」 「それに、孤門の兄ちゃんも気になる……あたしたちに、助けられるのか?」 「確かにそれも気になっていました。沖さんみたいに宇宙での活動が出来ればせめてどうにかできたかもしれませんが──」 こうしてお茶を飲んで落ち着きつつあるからこそ、却って死者の話題や今後の不安の話も出しやすいのかもしれない。沖一也の名前が出た事で大きく気分に不調が出る様子はなかった。プライベートな空間で、友人と些細な不安を語らうような物で、内面の心配を全て外に吐き出していくような効果があったのかもしれない。 それで、むしろ、誰も触れない話題にいとも簡単に触れる事ができて、枷が取れたように楽になったともいえる。 と、その時であった。 「────安心したまえ、プリキュアよ!!」 どこからか、これまでに聞き覚えのない男性の声が聞こえて、二人は咄嗟に警戒体勢を取った。周囲を見回すが、男性の姿など、どこにもない。しかし、声は間違いなくその部屋の中から聞こえたはずだった。 幽霊にでも会ったかのように怯えながら、二人は目を見合わせる。 「だだ、誰だ……?」 「わかりません……一体どこから聞こえたんでしょうか……?」 「ここだ、二人とも……!」 言われて、杏子は、おそるおそるテーブルの上を見た。杏子が手に取ったお茶の湯のみの淵である。眼鏡をかけ、フェルト帽を被った親指ほどの大きさの初老の男性がバランスよく立っていたのが確認できた。 ──小人や妖精にしては、その姿があまりに不審者然としており、敵か味方かもわからない不気味なオーラに満ちている。 思わず、その出来事に絶句し、杏子は、まるで害虫にでも遭遇したかのように、思わず後ろの床に手をついてしまう。 「うわっ……なんだ、こいつ!!」 男は、小さいながらもニヤリと嗤った。 つぼみもその謎の男に気づいたらしく、その男に訊いた。 「な、なんですか……あなたは!?」 「私の名は鳴滝。全てのライダーと、そして、プリキュアの味方だ!」 つぼみの問いに対して、その小人──鳴滝が答える。 何故そんな姿をしているのか気になったのだが、他人の身体的な特徴を訊くのは良くないだろうと思い、口を噤んだ。もしかすると、そうした身体的特徴を持つ世界からやって来た人間なのかもしれない。 それよりか、彼が何故ここにいるのか、どうしてこんな所に侵入できたのかの方が気になったが、これだけ小さい姿をしていれば気づかれずに目の前に来る事もできるだろう。──やはりそれも訊くに値しない質問だ。 つぼみが色々考えていた矢先、杏子が先に訊いた。 「つまり、あんたもベリアルに敵対している人間の一人なのか……?」 「その通りだ! 奴はライダーたちの世界やプリキュアたちの世界をも破壊しようとしている! 私はそれを阻止する為、あらゆるヒーローたちの世界を旅している者だ……おのれベリアルゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!」 鳴滝は、声高らかに叫んだ後、少しだけ間を置いた。自分自身で自らの発言を反芻して、考え直しているようだ。 「……」 妙な余韻が残る。──その間、つぼみと杏子は目を丸くしていた。 そして、鳴滝の方も結論が出たようで、もう一度言い直した。 「……いや、どうもしっくり来ないな。──今回は、お前は別に悪くないが……おのれディケイドォォォォォォォォォッ!!!!!!」 八つ当たりのように大声で叫んだ鳴滝であったが、その一言はこれまでの情報を関連づける事ができた。そう、彼の叫んだ「ディケイド」という単語には、二人とも聞き覚えがある。 このアースラに情報を提供している者の一人であり、左翔太郎の友人だ。本名は門矢士。まだ姿は現していない。 もしかすると、翔太郎ならば、この鳴滝という男の事も知っているだろうか? 現状では少なくとも鳴滝の話は聞いていないし、翔太郎もすぐに一人でどこかへ出かけてしまったので、ディケイドとの関係性というのはイマイチわからないのだが、──とにかく杏子は再度聞き直した。 「で、おっさん、何の用だよ……?」 女性の部屋に勝手に侵入した罪は重いが、先ほど「安心したまえ」という声をかけている。 何やら用事があるようなので、その用事とやらが一体何なのか──という事を知りたかった。それさえ済めば、この不気味な男も消えてくれると思ったからだ。 とにかく、それを聞いて鳴滝は、咳払いをしてから話し始めた。 「……蒼乃美希の所在がわかった。まずは、ここの艦長よりも先に、君たちに報告しておこうと思ってね」 「え!? 本当か!?」 「ああ。──彼女は、今、歴代ウルトラマンたちの故郷がある世界にいる」 蒼乃美希──つまり、彼女たちの仲間であるもう一人の生還者の足取りがようやく掴めたという事だ。故郷の世界にもいないので、誰もが心配していたくらいなのだが、どうやら生存していたらしい。 そして、鳴滝の計らいにより、ここの艦長よりも先に二人はそれを知る事になった。 「──生きているんですね!?」 「彼女は元気だ。ウルトラマンゼロと融合し、アースラとは別ルートでベリアルの元に向かい、一足先に孤門一輝の救出をしようとしている。だから、彼女の事も、……そして、孤門一輝の事も、心配する事はない」 そう言う鳴滝の顔は、豆粒ほどの大きさだが真剣だ。 美希がゼロなるウルトラマンと融合したという事実がさらっと語られているが、もし本当ならば──それは、非常に心強い話でもある。 カイザーベリアルという黒幕は、元々はウルトラ戦士で、ウルトラマンノアやダークザギを恐れていたという。そんな彼に対抗できる存在として、別のウルトラ戦士と協力する事ができる事実は、大きな鍵となる。 ただ、ひとまずは、美希が生存しており、アースラと同じくベリアルの世界に向かっているという事に安心していた。 再度、つぼみが確認する。 「……間違いないんですね?」 「ああ。いずれ、ここの艦長たちにも報告するつもりだ。君たちとは初対面だが、私もクロノたちとはベリアルの管理が始まって以来、情報を提供し合う関係になっている。……信頼してくれ」 確かに現状での鳴滝は、不審者でしかない。ゆえに、絶対の信頼を置いていい相手かはまだわからないのだが、クロノやはやてのお墨付きであるならば、また話は変わってくる。 それを確認する術は、今はないものの、このような嘘をついて意味があるとは思えない。──この状況下で意味もなく情報を攪乱させる愉快犯がいるとすれば別だが、まあそういうわけでもないのだろう。 それに、このアースラがなかなか美希を見つけられなかった理由についても、現在の彼女がウルトラマンとして活動している事を考えれば説明が付く。美希としての姿を見た者がいないというわけだ。 アースラと別ルートという事は、既に別宇宙に辿り着いている可能性も少なくはないし、辻褄は合ってくる。 「サンキュー、おっさん。不審者かと思ったら、良いとこあるじゃん」 「フッ……言っただろう、私は全てのライダーの味方であり、プリキュアの味方だ」 そう答える鳴滝は嫌に上機嫌である。若い少女に褒められて、悪い気はしていないようだった。 とにかく、この鳴滝の男は、ただひたすらに仮面ライダーが好きらしい。 「──……おのれディケイドォッ! 仮面ライダーも良いが、プリキュアもまた……素晴らしい物だな!!」 そして、彼はそれだけ言うと、また彼は満面の笑みを浮かべ、突如現れた小さなオーロラの中に身体を溶かして消えていった。 杏子とつぼみは呆然としながら、湯呑の淵をじっと眺めている。──まるで手品のような光景であったし、要件以外は言いたい事がさっぱりわからなかったのだが、少なくとも、今は敵ではなかったわけだ。 もしかすると、ああしてこちらに来たのだろうか。 ──杏子が平然とその湯呑で残ったお茶を飲み始めたのを見て、つぼみは引き気味に顔を青くした。 だが、杏子は全く構わずに続ける。 「で、あのおっさんは、一体何者なんだ……?」 「さあ……。でも、とにかく美希が無事らしい事はわかりましたし……結果オーライですよね」 このしばらく後、確かにクロノやはやてが「仲間からの報告」として、美希がウルトラマンゼロと融合して別ルートでベリアルを倒しに行っている事が明かされると、二人とも、彼の言葉の一定の信頼がおける事を再確認した。 ◆ ──左翔太郎は探偵である。 仮面ライダーであると同時に、優れた探査能力や推理力、行動力を持ち、今もまた、自分で考え、最適と思える行動をしていた。──味方しかいないはずのこの艦の中で、ある疑問の種を解消しようとしている。 「……」 左翔太郎は、他の誰に言う事もなく、こっそりとこの戦艦内部の奥に侵入していた。 侵入禁止とされているエリアも、彼は上手に入りこみ、暗がりの倉庫を懐中電灯などで照らしながら歩いて行く。 自分の探偵道具を使えば、このアースラの中にいる別の存在をいち早く確認できたのだ。 (どうして……“彼女”が、この艦にいたんだ?) ……そして、このアースラの中には、本来いてはならないはずの人物がいる。 翔太郎は、アースラを歩いている中で、たまたま“彼女”の存在を確認してしまった──。 ゆえに、探偵として、追わないわけにはいかなかったのだ。 「ここだな……」 倉庫の奥に、隠すように存在している日蔭のドア。──倉庫の奥はハイテクとは無縁な原始的なドアが備えられているようだった。 そこが、翔太郎の目当ての場所だった。彼は、周囲を見回し、誰もいない事を確認すると、ドアを背に立った。新しいドアノブを回した手ごたえが手に残り、ドアが薄く開く。 翔太郎は、目を凝らしてそちらを見た。 「──!」 「──やあ、左翔太郎だね」 その部屋は思いの外広く、暗く淀んでいながらも、並べられた不気味な機材たちを取り囲むように、三人ほどの人間が座っていた。彼らが、翔太郎の方を見ていた。──そこにいたのは、男性一人と女性二人、一匹の猫、それから、白い兎のような生物だ。 翔太郎は、一度驚いたのだが、それを飲み込み、堂々、その部屋に入り始めた。 どうやら、こちらに気づいていたようだ。 開き直り、部屋の中に入っていった翔太郎は、目の前の相手に告げる。 「……やっぱり、この艦の中にいやがったか。────美国織莉子」 そう、翔太郎は、彼女の姿を既に見かけていた。 目の前にいる少女──美国織莉子が、佐倉杏子に対して全ての制限を伝える場面を、モニターで確認しているのだ。ゆえに、ここに隠されていた者たちの中でも、翔太郎にも知られている存在である。 しかし、驚くべきは、その三人の容姿だ。 「……!」 一人は、白い服を着た十代後半ほどの男。 一人は、白みがかった髪の美少女。──彼女が、美国織莉子だ。 そして、翔太郎を驚かせたのは、残りの一人であった。フェイト・テスタロッサと瓜二つの、彼女よりも少し幼げな金髪の少女である。 「これは、フェイト……? どういう事だ……?」 「……」 思わぬ相手が現れた事に、翔太郎は息を飲む。フェイトとユーノが死亡する瞬間のモニター映像が翔太郎の中でフラッシュバックする。それは、フェイトと出会い、彼女を救えなかった翔太郎ゆえの感覚だった。 ただ、死人がここにいる事を驚いているのではない。彼女の命のお陰で命を繋ぐ事が出来た翔太郎は、それと全く同じ顔と目を合わすのが辛くもあった。 フェイトと瓜二つの少女が興味深そうに、翔太郎を見つめている。その瞳が、彼にはどうしようもなく耐え難かった。 「……左翔太郎さんですね」 織莉子は、そんな翔太郎の方を見ながら、冷静にそう返した。翔太郎は呆然とした顔付きのまま、織莉子の方を見た。 彼女の目つきは、生きている者のそれとは思えないほどに腐りかけていた。そんな瞳で見つめられる翔太郎も、僅かばかり緊張する。 「……ああ」 この艦の中にある暗部が、この三人の存在であるように思えた。──主催側に協力し続けた織莉子が、拘束されるわけでもなく、こうしてアースラの奥で何名かの人間と共にいる。 ただ一人、彼らと面会する事になった翔太郎であるが、この場に三人もいる事は予想外であった。 「なんで、あんたがここにいるんだ。隣の二人も……あんたの仲間か?」 「……ええ。私たちは、主催側に協力し、それを離反した三人です。こうしてここに隠れている理由という意味なら──それは、あなたたちと会えばカドが立つという配慮の為だと思われます」 翔太郎は知らなかったが──それは、主催側の人間たちのようだ。 そして、彼らはクロノやはやての配慮によって、こうして隔離されている。──実は、ヴィヴィオや杏子など、彼らに会っている人間はいたのだが、彼らのうち誰とも面識のない翔太郎以降の来航者は、この三人と会うのを意図的に避けるようにさせられていたのだ。 被害者と加害者の関係である以上、やはり余計な諍いが生まれる事が必至であると言えたのだろう。 特に、元々ここに来るかもしれなかったドウコクなどの事を考えれば妥当な判断だ。 「……ただ、厳密に言うと、アリシアは主催の協力者とは違う。あくまで、主催に協力した人間の娘だ。その人の名前は、プレシア・テスタロッサ。──君と遭遇したフェイト・テスタロッサの母だ」 白い服の男がそう言い出した。 プレシア・テスタロッサ、それに、アリシア・テスタロッサの名前は、フェイトの口から聞く事こそなかったが、変身ロワイアルに関する全参加者のデータや参加前の動向については、殆どプライベートなレベルの話まで公開されている部分がある。全員は把握していないが、翔太郎がフェイトの事を隅から隅まで把握しなかったはずがない。 フェイトがアリシアのクローンであるという事実もまた、あらゆる場所で翔太郎は聞く事になっていた。──尤も、翔太郎の知るデータが正しければ、プレシアもアリシアも死人であるはずだったが。 とはいえ、今更死人の存在で驚くはずもない。元々、フィリップと照井以外は死んだはずの知り合いしか参加していなかったくらいである。大道克己も泉京水も、NEVERという死人であった。──これで驚かなくなる自分も少し怖い。 ただ、それより、目の前の男の事も、翔太郎は知らなかった。 「あんたは……?」 「僕の名前は吉良沢優。ウルトラマンの世界からやって来た。言ってみるなら、異星からの来訪者とコンタクトを取る事ができる超能力者っていう所かな」 吉良沢優──こちらは完全に聞いた事のない名前だ。 ここまででもほとんど彼の名前が出てくる事はなかったが、もしかすると、彼の出身の世界である孤門一輝ならば何か知っていたかもしれない。 それから、超能力者というのは、少々気になった。 彼も変身するのだろうか──、と翔太郎は考える。 「──そして、織莉子は、魔法少女の能力で予知をする事ができる」 付け加えて、吉良沢が言った。 翔太郎は、黙って彼らの方を見つめていた。いつ攻撃を仕掛けられても良いように、ジョーカーメモリを握ってはいたのだが、吉良沢たちに敵意の影は見当たらない。 「正直に全てを話すよ。僕たちは、それぞれの願いと引き換えに財団Xにこの能力の提供と、協力をした。ただ、ベリアルの事は僕たちもこれまで知らされていなかったんだ」 「願い? ……あんな事を手伝ってまで叶える願いなんてのがあるのか?」 「──僕たちは二人とも、予知能力者だ。僕の出身であるウルトラマンの世界や、彼女の出身である魔法少女の世界が近々崩壊する事は僕たちも予見していた。だから、その崩壊を止める為に協力したんだ」 ──そう言われ、翔太郎は眉を顰めた。 「結果的に世界は酷い事になってるじゃねえか」 「そう。……だが、それは結果論だ。僕たちはこんな結果は求めていない──だから、寝返ったんだ」 簡単に言うようだが、吉良沢ではなく、織莉子が俯きだしたのを見て、翔太郎はそれ以上、責めるのをやめた。──考えてみれば、予知能力者という物には、絶望的な未来が見えた場合に何もできないというジレンマがある。絶望を待つしかない彼らの人生は、決して翔太郎のような普通の人間にはわからない物であるのだろう。 ……ある意味では、同情的に捉えられる部分があるかもしれない。 「こういう冷徹で機械的な言い方しかできないけど……。僕も、君たちのように巻き込まれた人間には申し訳ないと思っている。勿論、左翔太郎……あなたにも」 「……私たちの犯した罪は、いずれ、この艦の辿り着いた先で裁かれる事になるでしょう」 吉良沢と織莉子は浮かない顔でそう言う。──彼らもまた、言ってしまえば、殺し合いの被害者なのかもしれない。 サラマンダー男爵が、そうであったように……。 「……」 翔太郎は、誰よりも犯罪を憎む男だった。しかし、それでいて、誰よりも犯罪者を憎まない男でもあった。──彼らを許す時が、人より早く来てもおかしくはない。 それゆえ、それ以上は、あくまで質問として彼らに投げかける事になった。 「──だが、あんたたちの予知って奴で、こうなっちまう事は予知できなかったのか? それができるなら、世界の事だって──」 「無理だった。あの殺し合いそのものがイレギュラーだったんだ。……だから、ベリアルや財団Xも僕たちを手元に置いて予知の実験しようとしたんだろう。そして、結局それは、来訪者や僕たちの力をもってしても感知できなかった……。能力が取り戻るまでには大きな時間を費やす事になってしまったんだ」 そう吉良沢が返答した時、ふと、翔太郎はその言葉の微妙なニュアンスを感じ取る事になった。 能力が取り戻るまでに大きな時間を費やす事になった……? つまり、それは──能力が既に取り戻った、という事ではないか? そんな疑問を、翔太郎は次の瞬間、口に出していた。 「……能力が取り戻る……? それって……今は、正常に予知能力が使えるって事なのか? だとすると、ここで何かを予知した……?」 「──ああ。ここにいる織莉子は、ただ一つだけ、ここの機材の力を借りる事で、ある予知を成功させたんだ」 もしかすると、ここにある部屋そのものが、彼らが再度予知能力を取り戻す為の道具が揃えられている場所だというのだろうか。クロノたちも口にはしなかったが、その為の施設がこうしてここに備えられているという全面的なサポートが行われていたわけだ。 隠し事の匂いを感じ取り、こうして来てみた翔太郎だが、よもや、主催側の協力者と出会う事になるとは思っていなかったのだろう。 「じゃあ、その“予知”ってのはなんだよ」 だが、それよりか、彼が気にしたのは、その予知の内容の方である。 彼女がここで行った予知──それは一体何なのだろう。 吉良沢は、少し表情を曇らせ、告げた。 「この艦に、敵が侵入する。そして、この艦は──」 吉良沢の言葉は無情に響く。 「──ベリアルの島に辿り着くまでもなく、沈んでしまう」 ◆ 其処は、アースラの外──ただ、深い闇の続く空間だった。 よれよれの白衣を纏った、小汚い無精ひげと眼鏡の男が、瞳の奥を輝かせてニヤリと嗤う。 「────さて」 彼の名はニードル。 この殺し合いにおいて、ベリアルに確かな忠誠を誓っている者であった。 そして、そんな彼が立つ後ろには、何百人、何千人という規模の再生怪人たちの軍団が息を巻いている。獲物を狩るのを今か今かと待ちわびているようだった。 「我々も準備が完了したところで、そろそろ邪魔をさせてもらいましょうか──」 彼らの目の前に、光が円を描き、その中に緻密な魔法陣の姿が形作られ始める。 それは、ニードルの持つ「時空魔法陣」であった。距離や時空を問わず、二つの地点を結ぶ事ができる特殊な力学である。殺し合いの場においても、それは運用され、今生き残っている参加者たちも使用する事になったが──ニードルが、それを発動できるという事実は忘れてはならない。 そして、生還後に涼村暁がニードルと接触し、その動向が追われていた可能性が決して低くないという事実もまた──。 「──行きましょう」 ニードルは、この時空魔法陣を通して、間もなくアースラに襲撃を仕掛けようと目論んでいたのである。 怪人軍団は、声を合わせて、アースラへの侵入までのカウントダウンを開始した。 タイミングは今しかない。──蒼乃美希と血祭ドウコク以外の参加者が一同に会している今。 「カウント、ゼロ。夜襲(ナイトレイド)の始まりです……」 ◆ 時系列順で読む Back BRIGHT STREAM(1)Next BRIGHT STREAM(3) 投下順で読む Back BRIGHT STREAM(1)Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 左翔太郎 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 花咲つぼみ Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 佐倉杏子 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 高町ヴィヴィオ Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) レイジングハート Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 涼村暁 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 響良牙 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 涼邑零 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) ニードル Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 吉良沢優 Next BRIGHT STREAM(3) Back BRIGHT STREAM(1) 美国織莉子 Next BRIGHT STREAM(3)
https://w.atwiki.jp/asuka-ch/pages/155.html
レオン(11020) Ustream Checker最強のアスカ配信者 全ダンジョン打開 MPI MPI2打開 天宮がライバル視しているが本人は眼中にない様子 なんかいろいろすごい 実況者Ustreamまとめwiki、ユースト大百科を参照 ユースト自ch
https://w.atwiki.jp/asuka-ch/pages/213.html
概要 ルール 参加者 結果 リンク 概要 突発裏白蛇対決.途中参加途中抜けOK. 企画 フユ 日時 2010年8月31日(火)21時30分 ダンジョン 裏白蛇 制限時間 4時間 チャット会場 asuka-ch ust チャット #asuka-ch 階層報告先 #asuka-ch2 ルール ルール 到達フロアポイント制(80 階で倒れた場合は 80 ポイント).タイムアタック バグ利用 換金・変化バグ可,店主バグ可 AsukaTools おおむね可.故意でない強制終了での AsukaRestart は可.AsukaHack は不可.乱数値固定/非固定は自由 Asukagrid 可 エビマヨツール 可 Koppa 可(使い方) 参加者 配信場所 プレイヤー ust1 フユ jus1 ust2 Paul jus2 そかべ 風来u 風来j 自 ぶたまん,コウイチ,へいほう,せんにん,しいな AsukaReporter 結果 順位 プレイヤー 階層 1 フユ 100 2 そかべ 3 Paul 84 4 へいほう 69 5 ぶたまん 62 6 せんにん 33 7 しいな 25 8 コウイチ 22 9 すえぞう 14 リンク アスカch 風来ch 7畳半多窓 アスカチェッカー多窓 AsukaPlay
https://w.atwiki.jp/carstereo/pages/67.html
The stars say you re my best lover Matched up like sugar for a cake They say our love could conquer anything I d always hide my feelings Keep them so cool and so contained This time it s something I just can t retain Cos you give me a good vibe don t you know baby You give me funky love, funky love Could this be what love s all about baby Or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Your voice it calls me everywhere It haunts my room most everynight This thing has sure enough got me on the line No chance for explaination It seems my heart has led the way Is this my chance to find mon amour porfait Cos you give me a good vibe don t you know baby You give me funky love, funky love Could this be what love s all about baby Or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Love can be so misleading I d cross the earth both land and sea When I feel that moment badgering me Could be it s just illusion But in feeling something good indeed Is this where loving starts to mirror my dreams Cos you give me a good vibe don t you know baby You give me funky love, funky love Could this be what love s all about baby Or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream Is this for real or is it just another dream
https://w.atwiki.jp/asuka-ch/pages/177.html
魔天チャレンジ 概要 ルール 参加者と選んだダンジョンと配信場所と結果 メモ リンク 概要 魔天ダンジョンを参加者が任意に選んでクリアを目指す.主催者曰く「対決とかはどうでもよくて,そう maten yarouze 的な」(チャットを見ながら). 主催 BLE 日時 2010年5月2日(日) 21時 ダンジョン 銀猫魔天の挑戦,猿奇魔天の挑戦,幽幻魔天の挑戦,骨心魔天の挑戦,鳥飛魔天の挑戦,冥炎魔天の挑戦のいずれか 制限時間 3 時間 チャット会場 asuka-ch ust チャット #asuka-ch ルール ルール 到達フロアポイント制(80 階で倒れた場合は 80 ポイント) バグ利用 換金・変化バグ可,店主バグ可 AsukaTools おおむね可.故意でない強制終了での AsukaRestart は可.AsukaHack は不可.乱数値固定/非固定は自由 Asukagrid 可 エビマヨツール 可 Koppa 可(使い方) 参加者と選んだダンジョンと配信場所と結果 順位 参加者 ダンジョン 配信場所 スコア 1 BLE 銀猫 アスカch Jus 86 2 Bear 骨心 アスカch大会用 Ust 83 3 やっくん 幽玄(ヘイジ) アスカch大会用 Jus 50 4 くま 猿奇 自ch Jus 44 5 ラドラー 鳥飛 自ch Jus 40 6 ぬるぽ 猿奇 アスカch Ust 28 7 ざらめ 鳥飛 自ch Jus 16 8 Paul 冥炎 自ch Ust 14 9 チェキ 幽玄(ヘイジ) 風来ch どこか 11 メモ http //loda.jp/asukach/?id=146 ◎スーパー魔天系チャレンジタイム ・開始 5/2 21時〜24時 3時間 ・ダンジョン 銀猫 猿奇 幽幻 骨心 鳥飛 冥炎から好きなの ・参加者(敬称略) BLE銀猫アスch Jus Bear骨心大会 Ust Paul冥炎自ch Ust Yakkun 幽玄(ヘイジ)大会 Jus ラドラー鳥飛自ch Jus ざらめ 鳥飛自ch Jus くま猿奇自ch Jus めるぽ猿奇アスch Ust チェキ 幽玄or冥炎アスch Blog 参加者まだまだ募集中 Λ Λ (・ω・ )S ← チンタラ リンク アスカch 7畳半 アスカチェッカー せんにんさんとこの多窓
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/417.html
Nord Stream Pipeline -on stream- ◆5xPP7aGpCE 『ネオ・ゼクトール』 人間に生まれながらクロノスの超科学によって種の殻を打ち破った男。 男が目的とするのは復讐。 何の? ―――共に歩んできた仲間の仇 誰に対して? ―――アプトム 今攻撃しているのがその人? ―――違う、全くの他人だ どうして関係の無い人を? ―――”褒美”を得る為、他者の命など復讐の前には知った事か そうなんだ、でもうまく殺せるの? ―――殺せる、俺には死んでいった仲間達の力が有る! 自らの寿命と引き換えに男は力を得た。 超獣化兵エレゲンの電撃。 超獣化兵ダーゼルブの超高熱線。 超獣化兵ザンクルスの高周波ブレード。 そして、超獣化兵ガスターの生体ミサイル。 飛翔するゼクトールは眼下の森にそれを何発か放つ。 ミサイルは適切な間隔に広がり最小の弾数で最大の範囲が灼熱と爆風で満たされた。 落雷を凌ぐ轟音で大気が揺らぐ、焼け焦げた木片が煙を曳いて空を飛ぶ。 ゼクトールは空爆を一旦止めて旋回する、焼け焦げた地に動く影は無い。 が、あまりに破壊の惨状が酷すぎて少年の死体も見付からない。 最善なのは確認できる死だ、確信を持てない死で褒美を求める訳にはいかぬ。 (これ以上ミサイルの無駄遣いは出来んな、さすがに仕留めたとは思うが) 少年の足で移動できる範囲に満遍なくミサイルを降らせたのだ、確実に仕留める為とはいえ撃ち過ぎた。 死体は粉々になったかもしれないが問題は無い、要は確実性を積み増せば良い! 漆黒の巨体が高度を下げる、樹の枝を掠める程の低空飛行で森を縫う。 一瞬後、森に一つの太陽が出現した。 それはまるで溶鉱炉の白熱した金属、数千度の熱線が至近の生木をトーチへと変貌させる。 ヘーリオスの馬車が駆け抜けては生まれる炎の轍。 これが戦友ダーゼルブの力、超高熱。 破壊の跡を包む形で炎の環が出現する、息が有るかもしれない少年に逃れられない苦しみを与える為に。 炎が、そして濃密な煙が袋のネズミを追い詰める。 罠の口は、閉じた ※ ※ ※ 海風が炎を煽る、好餌を得た獣の如く森を貪り尽くそうと荒れ狂う、火の粉が噴きあがり遠方にまで撒き散らされる。 その煙は天を突く柱状となって一気に空を黒くした。 こうなれば全てを燃やし尽くさぬ限り消えはしない。 ゼクトールは空中でホバリングしながらその様子を見ていた。 これ程火が広がるとは予想外、しかしすぐさま奇貨としてこれ利用すべきと判断する。 (これ程の火事だ、必ず興味を惹かれた奴が集う筈!) その中にアプトムが居れば良し! 居なくても弱者は獲物に、強者が来たとしても飛行出来る己は逃げるのも容易い。 ゼクトールはここに二度目となる復讐の狼煙を上げた。 ―――己の命を燃やし尽くす為に ※ ※ ※ ケロロは民家の窓からそれを見ていた。 (あそこに居るのが誰であろうと……これ以上人が死ぬのは御免であります!) 一時の混乱はなんとか脱した、マッハキャリバーの話によって不完全ながら状況が掴めた。 ズーマの襲撃と撃退の事を、自らへの献身的な治療によってなのはが体力も魔力も使い果たした事を、最後に命を助けてくれたカナブンの事を。 そして―――サツキが死んだ事を。 『……Ms.高町を責めないでください、全てはMr.ケロロの状態を気遣っての事です』 伝えたのはマッハキャリバーの独断だった。 放送も近付きケロロがサツキの死を知るのは時間の問題、そしてなにより今必要なのは正確な情報だというのがデバイスが導き出した答え。 「わかってるであります、ヴ……グスッ!! 悲しいですが高町殿は何も悪くないであります! ズズッ……」 振り返る事はしなかった。 これでもケロロは軍人だ、今すべきなのは悲しみに暮れる事ではないと解っている。 なのははまだ臥せっていた、自分の所為でこうなったのだと思うと少しでも休ませてやりたい。 窓の外、目と鼻の先で森が燃えている。 再び目の前で命が失われようとしていた。 冬月かアスカか見知らぬ誰かか―――誰であろうとケロロには関係ない、襲われている弱者は今度こそ助ける。 「それでは我輩は行ってくるであります!」 なのはに黙って出て行くのは心苦しいがマッハキャリバーに弁解を頼んである。 だがその足は突然の声によって止められた。 「駄目だよ忘れ物しちゃ……。マッハキャリバー、ケロロの事をお願い」 何時の間に起きたのだろう、振り向くとなのはがマッハキャリバーを差し出していた。 クマの出来た目で、それでもにっこりと笑う。 彼女もまた軍人だった。 ケロロの心中を察し、彼を信頼しているからこそ任せると決めた。 なのはとケロロの目と目が合う、それだけで互いの意志が伝わる。 二人の瞳に有るのは強い意志。 それ以上の必要は無かった、サツキの事も治療の事もこれで終わった。 マッハキャリバーが素直に取られる、そして送り出す者として背筋を伸ばして敬礼する。 ―――行ってらっしゃい、でも死ぬなんて許さないよ。 「了解であります! ではこれより偵察及び人命救助作戦を遂行するであります!」 直立不動の体勢でケロロも右手を上げて敬礼する。 ―――約束するであります、必ず戻ってくるであります。 一軒の民家の窓から緑の影か飛び出した。 すぐ他の建物の中に姿が消える。 上空の目が届かぬ場所を選んでたった一人による作戦が開始された。 もう誰も死なせない為に。 ※ ※ ※ 立ち上る煙は島の大半から見る事が出来た。 南部だけは山に遮られた、しかし市街地ではどの場所でも認められた。 そして同時に多くの参加者に対してそこで何かが起こっている事を伝えた。 アプトムとネブラは高校でそれを見た。 彼らが訪れた時には既に無人、荒れてはいたが求める深町晶の手掛かりは無かった。 代わりに消火器や砲丸等、少しでも使えそうな道具を集めている時に異変は起きた。 『あそこには多くの者が向かうだろう……君はどうするかね?』 かりそめのパートナーが問う、アプトムは迷わず答える。 「行くぞネブラ、深町が見ていれば奴は必ず現れる。危険を承知で出向く価値はある」 言い終わらぬうちから男の肉体は変形を始めていた。 ガイバーをかたどった歪な怪人に姿を変える、これで移動速度は大幅に上がる。 ネブラスーツはそのままだ、外見は黒の胴体に緑の四肢というツートンカラーという奇妙さ。 『私としても"闇の者"(ダークレイス)と戦うまたとない機会だ、それなりに協力しよう』 ネブラにも反対する理由は無い、深町晶については何の感情も持ってないが自身が狙う”敵”と出会える可能性は有る。 ならばもはや高校に留まる必要も無い。 しかし空は飛べない、さすがに目立ち過ぎてしまう。 故にアプトムは駆ける。 ギュオー、晶、冬月といったそれぞれ目的の異なる探し人と出会う為に。 ※ リナ=インバースとドロロ兵長は高校を迂回中にそれを見た。 しばし足を止める、煙が上ってる以外には何も見えない。 「……今のあたし達には関係ないか、このまま遊園地に向かうわよ」 「そうでござるな」 だが直ぐに二人は歩みを再会する、待ち人との約束を果たす為に。 「あたし達だけなら考えたんだけどさー、見たところ遠いし行って戻るだけでも相当時間が掛かるわよね」 「確かに約束に遅れては拙者達の信用に関わるでござるな。少ない仲間は大事にせねばならぬでござる」 うんうんと頷き合いながらお互い「見なかった事にしよう」「男児たる者、約束を裏切れぬ」と煙を風景の一部として脳内処理する。 誰かが危険な目に遭っている可能性は有る、しかしその事を気にするあまり現実的な判断が出来なくなる程二人はお人好しでもなかった。 「じゃ、向こうは向こうあたしはあたしで動くとしますか」 そのまま時間を掛けて二人は高校を遣り過ごした。 ※ 惣流・アスカ・ラングレーは街角でしばしの休息を取っていた時にそれを見た。 確かめるとサツキやケロロを殺した公民館がある辺り、そこで彼女は考える。 「また化け物の仕業ね。方向からしてなのはかその仲間の仕業? 死んじゃえ!!」 彼女は今まで出会った殆どの参加者が化け物かその仲間として処理していた。 ならあの煙もまた”化け物”が絡んでいるのだろうと決め付ける。 ―――でも化け物はなんで火事なんて起こしたのよ? 嫌悪はするが無視も出来ない、アスカは苛立ちながらも自然と頭を巡らせてしまう。 「落ち着くのよアスカ、可能性が高いのはあそこで戦闘があったという事。つまり―――化け物と『人間』が戦っている!」 何ですぐに気付かなかったのよ、とパアッと笑顔を浮かべて彼女は立ち上がった。 あそこにはなのはやタママといった化け物が居る、その連中が戦っているという事はその相手は間違いなく人間だろうと結論付ける。 街が化け物だらけなら『人間』の仲間もどこかに偏ってしまったしても不思議でない、その人たちがようやく反撃を始めたんだ。 彼女はそんな事を考えた。 唯一の武器であるナイフを突き出して燃えている方角へ向ける。 「アハハハハハハハハハハハハハハッ!! ざまあみろ化け物共! 所詮人間様には勝てっこないのよ!」 脳裏に浮かぶのは間一髪でインディアンから主人公を助けに来てくれる西部劇の騎兵隊。 合流し一緒に化け物を殺してゆく光景を思い浮かべると自然と笑みがこぼれる。 そしてアスカはバッグを掴んで駆け出した。 ―――待ってて加持さん、すぐ助けてあげるから。 ※ ズーマは警察署からそれを見た。 目的はネブラ型のアイテムを探す事、しかし建物内部には何も残ってはいなかった。 先客が居たか、と舌打ちしながら外に出た所で煙に気付く。 すぐさま引き返して屋上に上る、森と住宅地の端が盛んに炎を上げてる。 僅かな時間でここまでの破壊を行えるのだ、相当な実力者があそこに居ると判断する。 だが、暗殺者としてはまたと無い機会でもある。 何も実力者そのものを狙う必要も無い、あの場から逃げてくる弱者を一人ぐらいは狙えるだろう。 それに実力者同士の潰し合いなら最後の最後に漁夫の利を狙える―――運が良ければだが。 「無視はしない、当分は様子見をさせてもらうか」 方針は決まった、そのまま軽やかに屋上を飛び降りる。 影の様に敷地から暗殺者が走り去る。 まずは遠巻きに機会を窺わせてもらう。 あの煙を見て集まるのは一人や二人ではない筈、集結後の混乱が絶好の狙い目となるだろう。 その為には弱者を見つけても泳がせておく。 ―――最後に勝つのはこのズーマだ。 ※ ハムと夏子はB-7にある喫茶店のガラス越しにそれを見ていた。 戦闘の痕跡に点々と続く血痕を見つけて慎重に侵入したのが少し前。 人が居たのはかなり前だったのだろう、席は全て冷たくなっていた。 代わりに見つけたのが壁一面に書き殴られた巨大な文面。 『うとたまなこりふうのぞうえたまつまりあのなたまうがつあたゆきるばうにいたるぞ ともそうはふおまきこおいたこま どうやら仲間に宛てたものらしい事は下に書かれた追記で解った。 『仲間のことは気にしないで コサッチへ』 もし壁の文字だけを見ていたのなら異世界の呪術かと疑っていたかもしれない。 罠ならわざわざ暗号にしないだろうと二人で少し考えみたのだが「ムハ~、お手上げですね」と匙を投げたのがつい先程。 「恐らく下の追記にヒントが有ると思うのですが……手掛かりが乏しすぎます」 ハムが両手を上げた直後に落雷にも勝る爆発音でガラスが震えた。 すぐに隠れた二人が窓越しに見たのは森を攻撃する黒い飛行物体の姿、このまま潜もうという考えが視線だけで交わされた。 そして事態が火災発生から延焼中にどんどんと悪化する状況を見せられて今に至る。 「外に出たら空からは丸見え、あの飛行物体が見えなくなるまでここに居るしかないと判断するわ」 それが夏子の判断だった。 あの時と状況が似ていたが今回は敵の姿がはっきりしているので気付かれない限り奇襲は心配しなくて良い。 「今回は我輩も賛成ですな~、嵐は過ぎ去るのを待つべきです」 ハムもそれに賛同した、今無理して外に出る理由は無い。 第一、店の外はメインストリートで非常に見通しが良い 二人はこのまま喫茶店に居座る事を決意した。 「ところで、さっきからキョロキョロしてるけど何か見えるのかしら?」 「いや~、お人好しなマンタさんが姿を現さないかと思いまして」 ―――現在、メインストリートに人影無し ※ 話は少し前に遡る、朝倉涼子、キョンの妹、ヴィヴィオは早くも探し人を見つける事が出来た。 ―――無言の死体としててはあるが。 「……喉を鋭利な刃物で一撃、か。状況からしてアスカの仕業とは考え難いわね」 簡単な検死を終えて私は立ち上がる。 血溜まりの中に小砂は倒れていた、乾き具合からいって死亡推定時刻は学校を離れた直後だろう。 深々と切り裂かれた首が犯人の腕力を物語っている、小砂の実力は知らないけど抵抗した様子がまるで無い事から犯人の実力も解る。 (恐らく戦闘の、ううん殺しのプロである可能性があるわね……全くもって厄介だわ) 小砂の表情に苦痛は無かった、抵抗どころか苦しむ間も無く死んだって事か。 あの支離滅裂なアスカには絶対に不可能なやり方だ。 さすがにこれ以上は解らない、犯人についての思考はひとまず打ち切る。 解っているのは付近には危険人物が確実に二人居る事か。 チラッと後ろを向いているヴィヴィオちゃんと横で小砂の死体を見下ろしている妹ちゃんを見やる。 私は右手の機械に視線を移す、拾い上げた直後から情報改変を試みているものだ。 軽い故障なら直っている筈、試しにスイッチを入れるがやはり反応は無しか。 もう少し調べる、裏蓋を開くとバッテリーがあった―――あら? 見覚えの有る形、バッグから使い道の無かった支給品を取り出して比べる。 形状、型番、端子から重量に至るまで完全に一致。 直ぐに中身を交換してスイッチON、液晶が光る―――ビンゴ、大正解ね。 「朝倉さん、それって何? ゲーム機みたいだけど」 妹ちゃんも興味深そうに覗き込む、画面にはマス目に光点が五つか、これは…… 「ゲーム機とは違うわね。妹ちゃんここを動かないでくれる?」 予感めいたものがして私は二人からゆっくり離れる。 画面を注視すると光点が四つ移動してた、一つだけが真ん中から動かない。 「ヴィヴィオちゃ~~ん、こっちに来て♪」 手招きするとヴィヴィオちゃんが不思議そうな顔してとてとて私に向かってくる。 うん、やっぱり可愛いわ。 予想通りに光点の一つが真ん中の光点に向かって動いてた、これは間違いないかな? 探知機―――デバイスより広範囲かつ一目瞭然に周辺を警戒可能なガジェット。 元の持ち主は使用不能になったと思い込んで廃棄した、でも間違いだったわね。 ヴィヴィオちゃんにお礼を言うと頭をなでなでする、うん最高。 さて、後は――― 「涼子お姉ちゃん、小砂さんあのままだと可哀想だよ……」 わかってる、死体をこのままにしておくつもりは無い。 ―――ヴィヴィオちゃんには悪いけど別の意味で、ね。 私は狭い路地裏に死体を移動させた。 隠すためだ、ヴィヴィオちゃんの視界から。 必要なのは首輪のサンプル、ナイフを首筋に当てたその時だ。 「朝倉さん」 突然後ろから声がした。 びっくりしたわよ妹ちゃん! 「それ……私にやらせてよ。でないとヴィヴィオちゃんに教えるよ?」 思い詰めた表情をしてた、こりゃ本気だ。 仇が既に死んでいて悔しいのかしら? ま……好きにさせとかないと収まらないか。 私は黙ってナイフを渡した。 「うんしょうんしょ……上手く切れないよ朝倉さん」 「ほら、ここが骨の隙間。刃を間に入れて、こじ開ける様に動かしてみて」 気合いとは裏腹に妹ちゃんは七区八苦していた。 これがお料理の手伝いとかなら微笑ましい光景なんだけどね。 「う~ん、えいっ!」 掛け声と共にブッツリと小砂の頭が分離した。 コロコロと転がるそれには目もくれない、目当ての首輪をそっと抜き取る。 これで解除に一歩ぐらいは近付いたか。 「気が済んだかしら、ゲンキ君しか見てない妹ちゃん?」 小砂の遺品にあったシーツで死体を隠す、お供え物として人形も置いておく。 これは唯の有機的物体だ、けどあの根暗女みたいにドライにも割り切れない。 「ううん、やっぱり自分の手で殺さないとダメ……全然仇を討った気分にならないよ」 納得出来ない顔して首を振る妹ちゃん、たぶんそれをやっても空しいだけと思うわよ。 ま、私としてはやる気ある状態なら構わないか。 「涼子お姉ちゃん、妹さん、あれ……向こうに煙が上がってる」 冷ややかな気持ちで路地を出た私が見たのは空を指差すヴィヴィオちゃんと立ち上る煙だった。 すぐに探知機を確認する、端の光点が高速で移動を始めていた。 「……かなり大きな火災みたいね、さすがにここからじゃ状況は理解できないか」 今度は反対の端に別の光点が現れる、こちらも早い。 進路からして遭遇はしない、問題は私達がどう動くか。 どうやら状況はアスカ一人に拘ってる場合じゃなさそうね。 一つは出来るだけ遠くに離れる。 探知機を見る限り興味を示す参加者が最低二人居る、そのどちらかが危険人物でも不思議はない。 言い方を変えれば安全策、ローリスクノーリターン。二人を守るだけならそれで良し。 では私達が現場に向かったとしてリスクに見合うリターンは果たして期待できるのか? 答えはYES、ゼロスさんやキン肉マンの他に古泉くん達がやってくる可能性はそれなりに有る。 あれだけの煙だ、きっと島の大半から見えているでしょうしね。 そして心強いのは探知機の存在だ、身を隠したまま周囲の動きが解るのは非常に大きな大きなアドバンテージ。 ……心が傾いてきたわ。 少し考えに没頭し過ぎたらしい、気が付けばヴィヴィオちゃんも妹ちゃんもメイド服のスカートをキュッと握っていた。 怖いのは仕方ないか――― 「涼子お姉ちゃん、私……あそこに行ってみたい」 「私も賛成だよ、行かせて朝倉さん」 前言撤回、二人共服を引っ張っているのが催促だとは! ま、妹ちゃんの理由は見当が付く、誰かに殺される前に自分の手でアスカを殺したいって事でしょうね。 ヴィヴィオちゃんはどうなのかしら? 「なのはママやスバルさんは人を助けようとして絶対あそこに来ると思う、だから行ってみたいの」 確かに善人なら来てもおかしくないでしょうね、でも絶対じゃないわ。 会いたいって気持ちは解らなくもないけど第一に自分の事を考えるべきじゃない? 「言うまでも無いけど……危険よ」 あえて冷たい言い方をする、生半可な気持ちで言っているのだとしたら自分勝手もいいところだ。 でもヴィヴィオちゃんは怯まず一途にお願いしてきた。 「それでも行きたい……」 そんな上目遣いで、しかも瞳を潤ませながら言われたら断れる? しかも妹ちゃんとのダブル攻撃。 ―――うん、それ無理。 「解ったわ、行くだけ行ってみるわよ」 はあ……自分がこんなに子供に弱いなんて思わなかったな。 ま、私もこの子達の為に何かしてあげたいって思ってたしね。 こんなにママや知り合いに会いたがってるんだ、お手伝いするのも悪くないか。 「ただし! 危なくなったらすぐに逃げる事、それが条件よ」 さすがにこれだけは譲れない、いざという時は腕ずくで連れ戻すつもりだ。 私はもう一度煙を見上げた、勢いが更に増しているのは気のせいじゃない。 虎穴に入らずんば虎子を得ず……ね、いい言葉だわ。 ―――さあ、行くとしますか ※ 「……ヴェさん、ノーヴェさん」 あたしを呼ぶ声が聞こえる、でも身体は重くて動かせない。 ぼんやりと目を開ける、空が紅くなっていた。 「起きましたかノーヴェさん。彼がずっと心配してましたよ、安心させてあげて下さい」 頭の横に中トロがいた、『大丈夫?』なんてプラカードを掲げてる。 そっか、あたしリングで休んでいたら何時の間にか寝ちまったらしい。 ……何か夢を見てた気もするけどまあいいか。 「あたしは大丈夫、ちょっと疲れちまっただけだ。勝てなくてごめんな中トロ」 頭を撫でてやると『気にしないで!』とプラカードの文字が変わった、ホント不思議な奴だ。 そして喋れない中トロに代わって起こしてくれた古泉もありがとな。 あたしと古泉、そしてオメガマンは頭を向け合う形でリングに大の字になっている。 将軍はコーナーで夕日を浴びながら一人佇んでいた、あれがダンディズムって奴なのか? 何か渋い。 そのまま静かに寝そべって風を浴びていると自然と試合の事が浮かんでくる。 ……あたしは負けたんだ。 思い出すとまた悔しくなってきた、思わず拳を握り締める。 ダイヤモンドナックルに写るのは無様なあたしの姿、気のせいか輝きまで落ちて見える。 将軍の言う通り相手が重傷だからって油断した? ……否定できない。あたしは得意になっていた、誤魔化す事なんてできっこない! どうしようもなく自分に腹が立った、悔しさで目頭が熱くなる。 中トロはそんなあたしを励ましてくれている、お前に見せたかったのはあんなあたしなんかじゃない! でも泣くもんか、負けてその上泣くなんてどうしよもなく惨めじゃないかよ…… 景色が滲みだした、あたしは思わず腕を上げて目元を隠す。 何やってんだ、バレバレじゃないかあたし…… 二度とこんな想いなんてしたくない! 「悔しいけど認める。オメガマン、あんたは強いよ。あたしなんかよりずっと強い!」 同じく寝そべっているオメガマンに向けて言う。 将軍に負けたからってあたしにも勝てるなんて勘違いしちまった、でもこいつには本物の実力があった。 だから謝る、そうしなけりゃあたしは変われない。 「クォクォクォーーーッ、この状況で油断する奴は大間抜けよ~~~」 高笑いするオメガマン、今更だし腹も立たなかった。 でもなんか自嘲気味に聞こえる、将軍に負けた事でも思い出してんのか? 「……大方油断して痛い目にあった、それも複数回。違いますか?」 古泉がツッコむと同時に高笑いが止んだ、こりゃど真ん中って事だよな。 思わず噴出しちまった、こいつもあたしと同じなんだ。 「ケッ、一流の超人というものは失敗を繰り返しながらも成長するもの……何度もブザマな姿は晒せんわ~~!」 正論だけど負け惜しみっぽく聞こえる、中トロも『やーいやーい』なんてプラカード掲げてる。 見えないけど古泉も笑ってる気がする。 「おやおや、あの時俺の姿を見て逃げた方の言葉とは思えませんね」 「フン、あれは冷静に状況を判断したまでの事よ~~~っ!!」 掛け合いの中で何時の間にか涙は止まっていた、これはオメガマンに助けられたって事になるのかな? もっと色んな事を聞きたくなった。 「オメガマンは何であたしと戦ったんだ? 古泉を万太郎に相手させたのはあたしが舐められてるんだって思ったんだけどさ」 あの時のオメガマンは女だからって油断は全然しなかった。 古泉の方が強そうに見えたからなんて単純な理由じゃないのかな? 「苦い過去よ……朝方お前程の女機械超人に不覚をとった、女相手に二度敗北を味わわされるのも情けないわ~~!!」 「女だって! そいつの名は?」 あたしの知る限り機械女なんて三人しかいない、まさか! 「スバルナカジマン、それが奴の名よ」 やっぱり! タイプゼロセカンド! あいつがオメガマンと戦って―――勝った? 「スバルナカジマンは強かったぜ~~~! 同じ急造タッグでもコンビネーションの出来はお前達と段違いよ~~~!!」 ……二度も負けた気分になる、オメガマンの言ってる事はきっと正しい。 タイプゼロセカンドとあたし。 朝って事は出会ったばかりのタッグでベストのオメガマンに勝ったタイプゼロセカンド。 あたしは―――重傷のオメガマン相手に思い上がって空回りして、そして負けた。 「クォクォクォ、このオメガマンが戦士として教えてやろう。スバルナカジマンは戦いから貪欲に学んで成長した。 対する小娘は戦う前から相手は弱いと油断して自分を見失った。どちらが上か超人ならずとも解るよな~~~っ!!」 ギリッと歯を食いしばる。 さっきなんかよりずっと悔しい、今のままじゃタイプゼロセカンドに勝てない! 「クォークォックォッ、その悔しさゆめゆめ忘れぬ事よーーーっ!!」 唇から血が出てるけどそんな事はどうでもいい! あいつとあたし、遺伝子は共通の筈なのに! 「将軍、後でまた教えてくれ! あたし……もうこんな思いしたくない!」 悔しくてたらない、今のあたしじゃまだタイプゼロ・セカンドに勝てない。 もっともっと強くなりたい! 「あの女に雪辱を果たしたいのは俺も同じ。その為なら特訓の協力程度してやるぜ~~~!」 「……やけに親切なんですね。痛い目に遭って角が取れましたか?」 痛む身体をそれでも起こす、古泉もオメガマンも一緒に起きた。 「フン、俺にもプライドはある。このオメガマンの真の実力を解らせてその態度を変えてやろうとしてるまでの事。決してお前らの為などではないわ~~~っ!」 バンッと掌を打ち合わせる、なんか憎めない奴だな。 ま、何時までも一緒って訳にもいかないと思うけどよろしくな。 「フフフフ、ノーヴェよ、お前には人の結び付きを強める才が有るようだな」 今まで黙っていた将軍がそんな事言う。 褒めたってまだエアライナーは出ないからな。 「って! 何だよありゃ!?」 思わず声を上げちまった、街のある方で煙が上がりだしたじゃないかよ。 古泉やオメガマンもそっちの方を注目する、中トロにはあたしが腕に持って見せてやる。 「距離は遠い、騒がずとも直接の影響は無い」 将軍は真っ先に気付いていた筈だ、でも当然だって顔してる。 ……そっか、アプトムやゼクトールを街に向かわせたんだから何時かはこうなるよな。 あたしは中トロを抱き締めたまま黙って煙を見続けた。 時系列順で読む Back 砂の器 Next Nord Stream Pipeline -blow out- 投下順で読む Back 砂の器 Next Nord Stream Pipeline -blow out- Another Age 高町なのは Nord Stream Pipeline -blow out- ケロロ軍曹 ネオ・ゼクトール 冬月コウゾウ 学校を出よう! キョンの妹 朝倉涼子 ヴィヴィオ 心と口と行いと生きざまもて(後編) アプトム Scars of the War(後編) 惣流・アスカ・ラングレー ラドック=ランザード(ズーマ) 情報を制する者はゲームを制す?(後編) 川口夏子 ハム リナ=インバース Nord Stream Pipeline -Disaster- ドロロ兵長 See you again,hero! 悪魔将軍 ノーヴェ 古泉一樹 ジ・オメガマン 中トトロ
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/631.html
BRIGHT STREAM(3) ◆gry038wOvE 【破】 ──それから、ニードルによる襲撃が行われたのは、夜だった。 時刻は、「五日目」が始まりを告げる頃である。──午前0時、きっかり。一つの作戦として、決行時刻までが定まった計画性のある襲撃のようだった。敵方集団がカウントダウンまで行い、妙に盛況していたのはまさにそれゆえだ。 ニードル一派はこの瞬間を、暁の動向を観察し始めたその瞬間から心待ちにしていた。 ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ 異物の侵入を認めた艦は、必死に警告音を流し続けた。 ニードルは、何事もないような暢気な表情で天井の隅を見上げる。 そして、再度真正面に向き直った彼は、自分の周囲にいる全体の一握ほどの部下にだけ、意味もなく、命令を告げた。 「……さて、思う存分暴れてください。それがあなた方の任務です」 「イーッ!!」 アースラの内部に、九つの時空魔法陣が開眼し、そこから武装された怪物たちが召喚され、活動を始める──。 ニードルたちの目的は、アカルンを利用した時空移動システムの破壊と、この場にいる生還者及び吉良沢優らの殺害にあった。しかし、それだけではなく、彼個人が悦に浸っている素振りもあった。 足止めの為に再生された数千の怪人軍団は、三分が経過しても未だに入り切れずに時空魔法陣から放出されていった。 アースラのシステムはそれから三分以内にその異常を確認し、艦内全域に放送を始めた。 ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ ≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫≪WARNING!!≫ 艦内に響いた音が、眠りかけていたクルーの六割の目を一瞬で覚まさせる。 生還者余名がベリアルの元に向かう予定日は、明後日(あくまで感覚的に。日付的には明日)──六日目だった。一日だけ準備の猶予があるとはいえ、それまでにある程度規則的な睡眠をしてコンディションを整えようと、それぞれ寝床には付いていた状況だ。 しかし、彼らも、うつらうつらとしながらも、やはりすぐには眠りにつく事ができず、多くはあくまで“眠りかけ”と言っていい。 日付変更と同時の警告音がそんな彼らの頭を冷やし、それぞれを慌てて部屋の外に出すに至った。近くの部屋にあった生存者余名は互いに寝間着のまま顔を見合わせる。全員が同じ行動を取ったようで、未だ眠り続けている者は誰一人いなかった。 『艦内に敵勢力が侵入! 艦内に敵勢力が侵入! 各自警戒態勢! ロストロギアの反応があります! 指示に従って行動してください!』 絶対安全だったはずのアースラに向けられた二度目の奇襲。 だが、時空の果てまでも追ってくるベリアルたちを前に、絶対安全な領域など既に存在しないのかもしれない。それは薄々気づいていたが、なまじ一日や二日耐えただけに、安心感が芽生え始めていた。 問題は、それを外部からの攻撃を中心に考えていた事であり、内部侵入は当初から殆ど想定されていなかったハプニングである事だろう。改修時には、いかなる手段を以ても、敵はこちらの座標を確認できず、内部の結界へと入り込む事は不可能に設計していた。 だが、ニードルは暁の衣服に小型の虫型偵察メカニックでも忍ばせたのだろう。それが敵に座標を知らせ、時空魔法陣を発動させる術の一つとなった。 外は亜空間。──現状では、生身の人間には、逃げ場がない。 内部に群がる大量の再生怪人軍団たちに、既に何人かの時空管理局のメンバーがすぐさま応戦を始めた。生還者たちの寝室を守る為、まずは、戦闘要員のクルーが四方に散らばる。 夜中である為に判断能力は全くといっていいほど追いついていないものの、艦内の戦闘要員は殆ど、命令を受けて怪人たちの前に立ちはだかる事になった。 「イーッ!」 「GAAAAAAAッ!!」 「コマサンダー!」 「ナケワメーケェ!」 「ソレワターセ!!」 「デザトリアーン!」 だが、敵の群れがやって来る場所は一か所ではなかった。 ランダムに九つ作られた時空魔法陣は、ニードルに制御された再生怪人の軍団をアースラに派遣し続け、アースラ内の人員では到底片づけきれないような物量作戦を敷く。──入り口が多数作られてしまったのが問題であるかもしれない。 これまでのアースラの構造には問題はなかった。しかし、今は違う。──ベリアル側がその安全設備を打ち壊す技術を有していたのだ。 あらゆる世界の怪物たちがわらわらと現れ、アースラを埋め尽くし始めた。 ◆ 果てのないようにさえ感じる長い廊下で、切迫する艦内放送を耳に通しながら、ニードルはまだ危機感の欠片も見せる事なく歩いていた。 廊下の真ん中をのんびりと歩いているニードルの真横を、次々に、血気盛んな仲間の怪人たちが追い抜いて行く。 彼らは軒並み、殺し合いの場を待ち望んで、能動的に敵を討とうと走りだしているようだった。しかも、自分自身の死を全く恐れる事なく進んでいる。 ニードルの支配下にある事だけが原因ではなさそうだ。──彼らは、ヒーローに倒された恨みを体のどこかで捨て去っていないのだろう。こうして蘇っても尚、彼らは悪役としての矜持に満ち溢れ、魂でヒーローへのしみを忘れない。死は最初からリスクに入っていないのだろう。 仮面ライダーたちと戦う、「BADAN」の怪人同様だ。 だが、ニードルはこんなにも使い勝手の良い駒を持ちながらも、それだけで不満足に感じる、渇いた心の持ち主だった。 だからこそ、彼はある準備を怠らなかったのだ。 ある意味、秘密兵器でもあり、彼の新たな実験材料の一つでもあった道具を実験する最後の機会が今であると思っていた。 ここから先は、ベリアルからの命令は足枷にしかならない。 この最後のミッションで、ニードル自身が、自分の意思で『遊んでみる』のも良い。彼もまた、バトルロワイアルの観客の一人として、自分自身の見られなかった残りの因縁を全て、見届けるのを待ち望んでいるのだろう。 不服に終わった試合もあったからこそ──自分よりもまず、他人の手腕を頼ろうとした。 「闇の欠片……さて、効果はいかほどでしょう」 ニードルが手に入れた『闇の欠片』。 それは、「闇の書」から生まれ、一つの事件を起こしたロストロギアだ。「記憶」を再生し、それに形と意思を与える──ゆえに、死者でさえもコピーし、生者の目の前に再現するという恐るべき遺物であった。 これによって発生した『闇の欠片事件』は、高町ヴィヴィオやクロノ・ハラオウンも関わった出来事であったが、タイムパラドックスを回避する為に管理局内で記憶消去が行われ、現在は彼らの記憶上には事件の記憶はない。時空管理局内に記録が残っているのみで、影響のない時代に行きつくまで、殆どの現代人には封印され続けるデータとなろう。 しかして、ニードルはベリアルの力によって、それを複数個得て、「島」の記憶をこのアースラ内部に発動し、生き残った参加者たちに混沌を齎して見せようとしていたのである。──あるいは、それが相手にとって満足に思える結果であるとしても。 主催側であると同時に、エンターティナーでありたいこの男は、──それを実行した。 「──ガドル、ダグバ、ガミオ、ノーザ、アクマロ……。ガイアセイバーズを苦しめた強敵たちの、再来です」 彼ら、BADANの中でも、ニードルの好むやり方だった。 ──死者を還らせる、というやり方は。 やがて、あの殺し合いの中で、参加者に敵対し続けた外道の怪物たちの記憶が、ニードルの手にした『闇の欠片』によって、あらゆる場所でばらばらに再生され始めた。 ゼロではなく、既にあった物から誕生していく物体は、再生が素早い。 眩い光を発したそれは、だんだんと人の形状に近づいていき、やがて、その体に色を灯し始めた。それぞれ、全く別の、しかしいずれも見覚えのある姿へと変質していく。 ン・ガドル・ゼバ。 ン・ダグバ・ゼバ。 ン・ガミオ・ゼダ。 ズ・ゴオマ・グ究極体。 ノーザ。 筋殻アクマロ。 腑破十臓。 ダークメフィスト──溝呂木眞也。 テッカマンランス──モロトフ。 仮面ライダーエターナル──大道克己。 暗黒騎士キバ──バラゴ。 プロトタイプクウガ──天道あかね。 此処にいる参加者たちを前に猛威を振るった敵の怪物たちが、アースラの隅々で再び産声をあげ始めた。 ──今度は、「命」ではなく、「データ」あるいは「記憶」として。 彼らは、死亡直前までの自分たちの思考を持ち合わせると共に、全員がまず、自分が何故こうして再び目覚めたのかわからなかったようであったが、だからこそ──自分が今いるこの場所を手探りに歩きだしたのだった。 「ベリアル……私のこのやり方、見届けて頂きましょう」 死者たちの最後の記憶が生み出した、『彼ら』は、果たして、いかなる行動をした後に消えていくのか──ニードルはそれを想った。 そして、この『遊び』が決してベリアルにとって不利益を齎す物でもなく、むしろ──この「アースラ」を沈める為の有効手段となりうる事をニードルは何となく予測していた。 どうなるか、はわからない。 しかし、今は傍観者として見届けよう──。 ◆ 高町ヴィヴィオ、レイジングハート、左翔太郎、花咲つぼみ、佐倉杏子、響良牙、涼邑零、涼村暁の八名は、長い廊下を走り、とある場所に向かっていた。 その先頭には八神はやてがいる。──彼女がクロノに代わり、「騎士甲冑」を装着したまま、彼らを案内しているのであった。 誰の表情の中にも、余裕はない。今はまさしく、アースラの命運がかかっている状況である。このまま敵の襲撃を上手くまけなければ、時空の狭間で全員が迷子にならないとも限らないという。──だとすると、おどけて勇気づける場面でもなかった。 ばらばらな足音は、却って妙に規則正しく聞こえていた。やがて、それも自ずと誰かの足を踏むリズムと重なり合い、一斉に同じペースで踏み込む音として溶け込んでいく。 はやての指示に従い、彼らは安全なルートを走っていった。 ──尤も、この警告音が鳴り始めて、十二分が経過した現在、管制室でさえ占拠され、安全なルートこそあっても、安全の保障されたゴールはどこにもなかったのだが。 結果、数秒後には、前方の安全確認が取れず、何もない廊下の上で、苛立ちながら立ち往生する形になってしまうのだった。 各々は、狭い箇所で固まりながら、はやてにブリッジからの連絡が来るのを待った。しかし、依然、混乱は激しく、なかなか情報が回ってこない。しばし立ち往生だ。 「くそっ……こんな所まで見つけてきやがって!」 涼邑零が、悪態をつく。 彼は、これまで最後尾について、他に比べて体力がないつぼみをフォローしていた。敵に姿を確認され、追尾された場合でも、零が仲間への攻撃を防げる形になっていたのである。 勿論、彼ならば並大抵の相手では手を出す事が出来ない。余程の実力者でもない限りは、零に襲い掛かった時点で、触れる事もなく返り討ちに遭うだろう。 ただ、敵方にホラーはいなかったようなのが不幸中の幸いであった。──もしホラーが相手ならば、それこそソウルメタルを扱える零しか倒す事ができなくなってしまう。今も活路を開くために戦闘を続けているクルーたちの中にも魔戒騎士はいないので、それこそ戦闘が厳しくなるだろう。 侵入者にはホラーを使役する事へのリスクが、ホラーを使役するメリットに勝ってしまったに違いない。おそらく、侵入者自身はホラーとは無関係の存在だ。 そして──彼らの中でも、襲撃者については、おおよそ答えは出ている。 「……侵入者の首謀は?」 「おそらく、……ニードル」 「間違いないんだな?」 ──暁が、再三の確認のように、はやてに問うた。 実際、はやてが既に首謀者がニードルらしいという事実は映像によって確認していたし、それは既に報告されている。 これ以上、別にそこを疑う余地はないと思われたが、そんな報告に対しても、暁は不審げだった。 暁を逆に怪訝そうに見つめながら、はやてが答える。 「ただ、ニードルだけとは限りません。しかし、確認が取れているのはただ一人。何らかの方法でこちらの座標を見つけ、この時空に立ち入った可能性が高いです」 「そうか……」 暁は溜息を吐く。何か、後ろ暗い事でもあるのだろうか。 彼がニードルに固執する理由は、バトルロワイアルの真っ最中では特にない。同一世界出身というわけでもないので、一層不可解であった。 しかし、この状況下、そんな細かい暁の所作を気にした者は少なく、すぐに杏子が横から口を挟んで言った。 「だけど、これだけの数に来られたらリーダーが誰だろうと関係ないな、もう。敵のリーダーを倒せば終わるってわけでもないし……」 圧倒的な物量を前にしては、多勢に無勢である。 ヴォルケンリッター、元ナンバーズ、エリオ、キャロ、ウエスター、サウラーなどはともかくとして、学院の初等部クラスの年齢のストライクアーツ選手までも戦場に駆り出さなければならないというほどの、アースラ側の逆境は覆される様子がなかった。 世界の平和の為にも死ぬわけにはならない生還者たちは、彼らに全てを任せて逃げ惑うのみで、不甲斐ない想いを噛みしめる。当面の敵とまだ遭遇してさえいないのが余計に胸を悪くした。 中でも、変身さえできない状況にある佐倉杏子と花咲つぼみは、こうして実戦の場に来てしまうと、「自分たちにこれから何が出来るか」という問題に頭を悩ませる事になってしまうわけだ。 ──いや、もしかすると、なまじ大きすぎる力を持っているばかりに、それを使わせてもらえない者の方が猛り立っているようでもあったのかもしれないが。 「──くそっ、俺たちは戦えないのかよっ! 元気はあり余ってるってのに!」 良牙は苦渋を噛みしめて壁を殴った。 それは先ほどまでのような小さな配慮は一切なく、固い壁に巨大な罅を入れるほど強く殴られる。──彼自身が持っているもどかしさだった。 コンクリートよりも遥かに硬いアースラの内壁を生身で破壊できるのは彼くらいの物だろう。 だが、全員がそれと同様の気持ちを抱えているが、良牙のこの一撃を黙って見つめた事でどこか吹っ切れたのかもしれない。その極端な力で表象された怒りは、他の者の頭を少し冷やさせた。 「万が一の事があったらあかんからなぁ……」 「……だからって! 戻るわけにはいかねえのか……!」 万が一の事があるかもしれない──そんな状況に、自分より弱い少女を立たせている現実に良牙は気づき、憔悴する。 先ほど、リオやコロナといったヴィヴィオと同年代の少女にも格闘について教える羽目になったが、そこでの実力を見るに彼女たちを怪人軍団と戦わせるというのは酷な話だ。それならば、まだ良牙一人が戦いに出た方がずっと意味があると思える。 いや、実際のところ、良牙が行ったところで返り討ちのリスクなど少ない。全世界中見回しても、彼やその世界の人間ほど鍛えられた人間はそうそういないほどだ。──怪人を相手にしても、これまで善戦してきた。 リオやコロナはそれに対し、リスクもある。死んでしまった場合、無駄死にだ。 「そんなに元気があり余ってるなら、それを目いっぱい、ベリアルの方にぶつけてや」 だが、はやては、良牙を少しでも危険な場に出す判断を下すわけにはいかなかった。良牙にも、臆する事なくそう言った。 こういう状態になってしまったからには、生還者の命がこの場では最優先になる。──そう、たとえ、秤に乗せられたもう一方が、彼女たちのような小さな少女であるとしても。 この船に乗りかかった以上、彼女たちもそれを覚悟の上でヴィヴィオに付き添おうとしているのだから。 はやて自身も、こんな判断は下したくはない。熱い魂を持つ一人の女性として、冷徹で不合理な決定も躊躇いは捨てきれないのだが、仕方がない話だった。 「……っ!」 だが、もし、それを一言謝れば、良牙も気は緩む。 悪役のいないもどかしさを良牙が感じ続けるよりは、自分が悪役になる事で彼の気分を落ち着かせておこうと思った。 だから、この場ははやては、冷たく無責任な言葉を投げかけて、彼らが持つ恨みや無力さは全て自分の胸で受け止めようとした。 「……くっ!」 良牙ははやてを殴りかからん勢いで、両手の拳を強く握る。 だが、はやての本心が隠しきれてないだけに、良牙はそこから先のアクションを起こす事が出来なかった。──勘の鈍い良牙であっても、その場に流れる空気と目の前の女性の表情が訴えるもどかしさくらいは感じ取る事が出来たのだろう。 そもそも、彼自身、元々、自分の怒りに任せて無抵抗の女性を殴るほど、強さと暴力をはき違えてはいない人間だ。 「……っ」 ──良牙は、結局、はやての意図した通りにはやてを憎み切る事はしなかった。 むしろ、正反対だ。力を抜き、怒らず、少し竦んだように見えた。警告音が鳴りやまないが、その一刻を、良牙を哀れみ見つめる視線が鎮めた。 はやての考えは、どうやら裏目に出たようだ。結果的に彼の戦意を奪ってしまった。 はやては、それから少々ばかり優しい声で良牙の名前を呼んだ。 「……良牙くん。あなたたちに、世界が全部かかっているのを忘れないでください」 「……」 だが、──そのすぐ後に、良牙は蚊の鳴くような声で一言呟いたのだ。 それは──「悪い」、という言葉のように、聞こえた。他の者にはどうだかわからないが、はやての耳にはその一言が聞こえた。 それが謝罪の意味であるのは確かだが、言葉通りの謝罪の意思であるようには聞こえなかった。 「──……っ! でも、それなら、悪いが、あんたたちとは一緒に行けねえ。あんたの気持ちはわかるが、俺は俺の道を行ってやる!」 良牙は、すぐに、険しい顔でそう宣言した。 立ち上がり、引き返す心を決めたのである。 ──それは、良牙のお人よしな性格による物であった。そして、いざという時に自分の意思を最優先する、ある種身勝手な性格による物でもある。……彼は、周囲が見えなくなる事は多々あれど、小さな子供を見捨てるほど狭眼ではない。 「……!」 良牙のその時の剣幕に、はやても悪役でいる事を諦めそうになり、一瞬、反論の言葉を失った。──言葉が喉の奥で詰まったのだ。 その隙、だった。 また、誰かが、良牙の近くに添うようにゆっくりと歩きだした。革靴が床を踏む音が警告音をひとたび掻き消す。その男が、良牙に言う。 「──……よく言ったぜ。良牙……俺もそう思っていたところだ。それに、お前一人で行かせたんじゃ、迷子になるしな」 はやてが何か言う前にそう付け加えたのは、黙ってその様子を見ていた翔太郎であった。 彼も良牙の一言によって、何か決心がついたようであった。──彼もまた、はやての命令と自分自身の意思を天秤にかけ、自分の道を選ぼうとしたのだろう。 「……っ!」 このまま行けば、歯止めが効かなくなる──と、はやてはその時、察知した。 険しい顔で、良牙と翔太郎のもとまで詰め寄るはやて。 「駄目ですッ!」 今の彼らは、はやての権限よりも、個人の感情に傾き始めている。だからこそ、今度は、前に一歩出て、良牙と翔太郎の頬を、思い切り平手打ちした──。 ────パンッ!、と。 渇いた音が鳴り響く。 良牙と翔太郎の頬に痛みが伝導する。 はやての右手の掌が赤くなる。 「はやてさんっ!」 ──周囲がざわついた。 ここまで見てきたはやての性格と、少し異なった態度であったからであろう。責められる事を覚悟の上での行動であったが、はやての表情は、ここにいる全員に向けられた怒りのまなざしに変わった。 「……みなさんには、これからベリアルと戦いに行ってもらわなきゃなりません。敵の強さもわかっていないのに、こんな所で無駄骨を折らせるわけにはいかないんです」 敬語に変えたのは、翔太郎がはやてよりもおそらく年上であったからというだけではない。自分自身が折れない為でもあり、正式な命令である事を強調する為でもある。 それが自分に出来る唯一の、権限の象徴化だった。翔太郎に力では勝てないが、この場での権威というならば別である。一時的にでも時空管理局の傘下に入ったからには、その組織の命令を逐次聞かなければならないはずだ。 しかし、翔太郎は、赤みがかった左の頬を撫でながら、はやての瞳を見据えた。 「悪いけど……。俺ももう、小さい子供を置いて逃げるのは御免なんだ」 「……フェイトちゃんやユーノくんの事ですか」 「ああ。俺は、ガドルに負けて、あの二人に任せて逃げる事になっちまった」 残念ながら、翔太郎は、「組織」に属する人間ではなかった。それどころか、私立探偵という至極自由な身である。自分で決め、自分で行動するハードボイルドを目指す男だ。 だが、──そんなハードボイルドが、何度、この世界の子供を盾に生き残れば済む事になるだろうか。それは、翔太郎の悔いだ。 結果的に、関わっただけでも、フェイト、ユーノ、アインハルトと三人も、未来ある子供を死に至らしめたわけだ。下手をすれば、はやても変身能力有者である以上、ベリアルに目を付けられていれば、あそこで死んだ少女たちと同じ運命を辿っていたかもしれないだろう。 「──あの事をこれ以上気に病んだってどうしようもないって事くらいはわかってる。だが、これ以上同じ過ちを繰り返すのは、もっとどうしようもない」 「なら、あたしも行くよ」 杏子が少し前に出て、言う。 ──思えば、翔太郎と杏子はあの時、共に行動していたのだ。 「……杏子」 「その理屈で言うなら、あたしだって同じだろ。いや、むしろあたしの方がその原因に近い。……戦えなくても、避難誘導くらいなら出来るだろ?」 翔太郎同様、この状況にあの瞬間の事を重ねていたのだろう。不安げな表情というか、後悔の念を未だ捨てきれない表情で、袖を握って言う。脇を見て、視線を合わせる様子はなかった。──何故なら、翔太郎を逃がしたのは他ならぬ彼女なのだから。 しかし、あの時、杏子に後悔の念が襲った事は、確かに今に繋がっている。杏子自身もあの判断によって助けられ、今に至るのだが、──それでも、誰かを餌に生き伸びる時の後悔に勝る痛みはない。 拭い去れない過去。そして、フェイトという犠牲。年下の少女を利用し、戦いに連れ立った自分の卑屈さ。──それを思い知る。 杏子には今、変身能力がない。だというのに、意志は固かった。 「いい加減にしてください! あなたたちが過去の自分に出来なかった判断を下したいのはわかります。でも、今はあなたたちにコロナやリオを信用してほしいんです! あの子たちが勝つ事を!」 「じゃあ負ければどうなるんだよ!」 「……それは」 死ぬ。──そのリスクは充分にある。フェイトたちがそうであったように。 現在はまだ死亡報告はないが、これは彼女たちがやって来たストライクアーツの領域を超える殺し合いである。参加者ではないが、その組織に巻き込まれてしまったわけだ。 言うならば、一介のスポーツ選手が軍人との戦争に参戦するような物で、いかなる強さを持って居ようとも、それが必ずしも殺しを目的とする相手に通用するとは限らない。まして、彼女たちはまだ小学生、中学生相当の年齢だ。 強さも判然としない敵に立ち向かわせるのは、決して正しい判断とは言えまい。 だが、力の程度に関わらず、戦力となりうる物は全て足止めに使わなければならないのが今のこの艦の状況だったのだ。 すると、── 「八神艦長、人は強くなけりゃ生きてはいけない。だけど、優しくなけりゃ生きている資格はない。──……あんたは生きてる資格がある奴だと思うぜ。でも、俺たちはあんたの想いを振り切って、行く。……だろ? 良牙、杏子」 ──翔太郎は、そう訊いた。良牙と杏子は黙って頷いた。 依然、警告音が鳴り響き続け、その場の沈黙を赤いサイレンランプが周回して彩り続けていた。 「翔太郎さん、良牙さん、杏子さん……」 ヴィヴィオのような元の世界の知り合いは、コロナやリオを信頼してもいる。そして、はやての指示に抗うにも不相応な気分である事を理解している。 だが、代わりに誰か、同じように信頼できる人間に無事を確認してきてほしいと思うのもやむを得ない事であった。 ヴィヴィオとレイジングハートは黙って見守る。つぼみや、零や、暁の場合は、翔太郎たちに一定の信頼を置いていたゆえ、別段、彼らに付き添う事もなく、彼らの背中を見守ろうとしていた。彼らも頷くような素振りを見せ、見送ろうとした。 「……だから、そういう事だ。俺たちは行く。でも、すぐに戻るからな!」 ──それを合図にしてか、翔太郎たちは駆け出そうとした。 いや、既にその視線ははやてたちの方にはない。 「……」 はやては、その言葉と行動に何も言い返す事ができなかった。──ただ、その背中を見た時には、ほんの少しむしろ彼らこそが英断となる可能性があるのを信じるように揺れる心が芽生えた。 あくまで、翔太郎たちを行かせられないのは「リスクの回避」なのだから。──それは、「死亡の回避」ではない。 だが、もしかすれば、「リスク」は「死」に繋がってしまう可能性はある。だからこそ、行かせられなかった。 「……」 いつの間にか、はやて自身の心の甘さは、彼らを危険地帯に向かわせる事を選ぼうとしていた。 ある意味では、はやても、彼らにそんな期待をしていたのかもしれない。 遠ざかっていく。 はやての前で、彼らの背が──。そこに、何か一声でも先にかけようとしたのかもしれない。はやては、それを肯定するか否定するかはまだ判断していなかったが、せめて一瞬でも彼らを止めて、そこに何か後から言葉を乗せようとしていた。 待て、と。 しかし──そんな時であった。 「──待てよ、お前ら」 そんな彼らの前で、ある男が止めに入ったのだった。 はやてのでかかった言葉を遮るように。 だが、それは、はやての告げようとした言葉を借りるように。 「──お前らだよ、仮面ライダーダブル……そして、響良牙」 始めは声だけが聞こえ、思わず翔太郎たちの背は、はやてたちの目の前で立ち止まった。 それを確認したのか、その声の主は、廊下の角から、まるでその場に隠れていたかのように現れたのだ。 「……!?」 そうして現れた「声の主」の姿に、誰もが驚くと同時に、わが目を疑った事だろう。 ──一度、良牙の方を見て、再度、そこにいた者に視線を合わせた。 「……お、……」 まだ翔太郎たちの背中を見つめていた者たちの視界にも、その男の姿が焼きつけられ、そして──時が止まった。 めいめいが背筋を凍らせたのだが、中でも良牙とつぼみはその姿を信じられないと思う気持ちが強かったのだろう。二人は、心臓さえ凍らせた。 「お前は──!!」 そこにいたのは、白い体色、黄色い瞳の細見の戦士であった。 黒いローブを羽織り、響良牙がこれまで変身してみせた「仮面ライダーエターナル」そのものな恰好をしている。 ……いや、彼こそが、「仮面ライダーエターナル」なのだ。 ──その低い声は間違いない。良牙とつぼみを本能的に震わせ、騙させる感覚。 「──エターナル……、だと!? 良牙じゃねえ……!?」 「久しぶりだなァ、お前ら」 聞き覚えのある声に、翔太郎も戦慄する。いやはや、それは間違いなかった。妙に心が納得した。 ──翔太郎も、彼を、知っていた。 それも、尋常ではないレベルで。 「……人とメモリは惹かれあう、か。なるほどな……俺も何となく立ち寄っただけで、懐かしい奴らと……新しいエターナルと会えたわけだ」 そんな独特の口調で、それぞれが確信を抱いた。 だからこそ、わけがわからなかったのだろう。──その男は、翔太郎の記憶の中では、三度も死んでいるはずだった。 「大道……」 一度、非業の交通事故で死に。 一度、仮面ライダーダブルに倒され。 一度、仮面ライダーゼクロスと相打った。 「克己……!」 そんなかつての仮面ライダーエターナルの変身者──大道克己と、殆どが同じだったのだ。それが現実に目の前にいるという事を知って、翔太郎たちは固い息を飲み込んだ。 良牙たちが、信じがたいといった様子でエターナルに言葉をかけた。 「何故、貴様がここにいる……!?」 「大道……地獄から迷い出たかっ!」 「地獄──? いや、今の俺は死人ですらねえ。ただの記憶のデータの集合さ。どういうわけだか、そいつが俺を再生しているらしい。つまり、お前の相棒と同じさ」 良牙と翔太郎が、並んで立ち止まり、構える。 未だ、彼への警戒心は解けないままだ。──エターナルがいるならば、まだ別の戦士がいるのではないかという想いも湧きあがった。かの、怪人軍団に紛れて、想わぬ大物が釣れてしまったらしいと見える。 それを見ていたはやてが、もしかすると──あるデータとその存在が合致するのではないか、と感じた。 「この反応……まさか──『闇の欠片』かっ!?」 誰もが、はやてに注目した。 はやてが口にしたその情報に、ヴィヴィオやレイジングハートまでも当惑した様子だった。──“名前”だけは、確かにどこかで聞き覚えがあるのだ。 彼女たちも、かつてその名を聞き、それが起こした重大な事件に関わったような心持さえする。 「闇の欠片……?」 「……記憶から形状をコピーして、人格を再生するタイプのロストロギアです。時には、遠い過去の人格が再生されたり、裏の人格が再生されたりする事もある……!」 はやて自身が、非常に切迫したようにその説明をした。 確かに、ヴィヴィオやレイジングハートもまた、あるいは──その効果を、どこかで実感していたのかもしれない。何となく想像の通りだった。 それは遠い記憶の彼方に閉ざされており、決して開かれる事はなかったが、目の前に仮面ライダーエターナルに対しても、──エターナル自身には会っていないというのに──奇妙な懐かしさを覚える。そのロストロギアの反応を覚えているのだろう。 ヴィヴィオの真上でクリスもまた、戦慄し、構える。 「なるほど。闇の欠片、か……。俺はそんな名前の物体でできているわけだ。──まあ、俺にとってはそんな事はどうでもいい」 エターナル自身も、自分が何故こうしてここにいるのかわかってはいなかったが、それについてこれといった執着は見せないようだった。 死者でもあった彼にはそんな気持ちもないのだろう。 良牙は、より一層身構えた。 全身の筋肉が硬直し、エターナルメモリを何の気なしに仕舞う懐に注意が向けられる。 「まさか……エターナルを取り返しに来たのか?」 「残念だが、それは違うな。エターナルはもう俺を必要としていない……そいつはお前もわかってるだろ?」 エターナルは、──いつか見た夢のように、そう告げた。 仮面ライダーエターナルの姿をしていながら、彼は記憶の結晶でしかない。腰を巻いているロストドライバーやエターナルメモリは偽物でしかなく、克己自身の記憶が「本物」の想いを尊重したのだろう。 言うならば、大道克己の亡霊の意思は、そういう発想に行きついたのだった。 つぼみが、あまり警戒する事なく、エターナルの元に近寄った。 「克己さん……」 「よう、プリキュア……お前には随分良い夢を見させてもらったな。そいつにだけは感謝してやってもいい」 其処にいるエターナルは、確かにつぼみが死に際までを見届けた大道克己その人だったようである。心には母親への微かな愛情さえ残して現れているのだろう。 しかし、それを得ても尚、彼は素直な言葉をつぼみに向けようとはしなかった。 どこか偽悪ぶった口調でもあった。つぼみは克己を信じるが、かつて彼を悪人として葬った翔太郎は信じ切れていないようだ。生身で、エターナルに詰め寄る。 「……大道。まさか、お前、また、生きている人間を全部、お前と同じ死人に変えるなんて言わねえよな。だとしても、俺たち仮面ライダーやガイアセイバーズが──」 「だから、さっき言っただろう。今の俺は死人ですらないと──大道克己を模した、大道克己とは別の、いわばデータ人間さ。俺に生者を死人に変えるメリットはない」 「……じゃあ何が目的だ? 今度は人間を全部データ人間でも変えるのか?」 翔太郎としては、尚更、訝しむ場面であった。克己の蘇っての企みが何なのか──それによって、翔太郎は彼を再び倒さなければならない。 ロストドライバーとジョーカーメモリを両腕で持つ。 それを見ていると、エターナルの声は、照れるようにふと笑った。悪役ならではの自嘲気味な笑みが、その後の言葉の意味を、翔太郎に聞かすのを遅らせる。 「──今日限りだ。俺“たち”は、この船に乗りかかった奴らが当面の敵を倒しに向かうまで、ここにいる全員を全面的に援護し、出航を手伝う」 翔太郎だけではない。誰もその意味を一瞬では理解しなかった。 悪い意味を前提と考えた者が多かったからであろう。 エターナルは続けた。 「……まっ、そこから先に行きつく場所が地獄になるか、それとも今まで通り生きていられるかは、お前ら次第って所だな」 すると、エターナルの言葉を合図に、彼の後方から数名の怪人が現れた。一斉にその姿に注目が集まり、驚いた者もいた。 否──しかと見れば、それは、怪人と一概に言うべき相手ではなかったかもしれない。 ナスカ・ドーパント、ルナ・ドーパントの不揃いな二名が構え、翔太郎を見据える。 赤い仮面ライダーもそこに並んでいる。──誰もが姿にだけは見覚えがあった。 「お前……まさか……」 その名は、仮面ライダーアクセル。 その意匠だけは、石堀光彦による変身で見た事のある人間もいるだろう。──だが、その戦士には、既に死んでしまった真の変身者がいた。 アクセルは、懐かしい声で、翔太郎に告げた。 「──記憶の欠片が再生しているのは、大道一人じゃないぜ」 「照井! お前も、大道たちに協力するのか……!?」 「俺に質問するなッ!」 ──ああ、それは、あの照井竜の声で間違いなかった。 だとするのなら、ナスカ・ドーパントはやはり園咲霧彦であり、ルナ・ドーパントは泉京水という事だろうか。 「ヴィヴィオちゃん。元気そうで安心したよ」 「霧彦さん!?」 やはり──そう。 彼らは、死者と同じ人格を有した『闇の欠片』なのだ。その想いと姿に限っては、確かに彼らの心強さが再現されている。変身後の姿を模してはいるが、それは確かに彼らの魂を引き継いだ戦士たちだった。 リニスの想いを再生した闇の欠片が、フェイトの成長を見つけ出そうとしたように──優しさも強さも捨てず、まだ戦い続ける。 そして、彼らはベリアルの野望を打ち砕こうという想いに限り、確かに共通し、その点においては、ガイアセイバーズと結託しうるのだった。 ──きっと、これが彼らとの、最後の共闘となるのだが。 「あなたたちの仲間の援護は始まってるわー! 艦のみんなも守護(まも)ってアゲてるみたいだから、友達も心配しないで先に進んじゃってOKよ!!」 「お前……」 「キャーッ!! NEVERなのに、みんなにこんなに優しくしちゃっていいのかしらーっ!! まるで仮面ライダーみたいネッ!!! あっ……でも、これここだけの話、他ならぬ克己ちゃんの命令なのよ? 他のみんなには内緒よ? キャーッ!! 言っちゃったー!! キャーッ!!」 「……黙ってろ、京水」 仮面ライダーエターナルに、その場で聞いている全員の視線が集中した。いずれも、──つぼみでさえも、意外そうである。 だが、このルナ・ドーパントの言葉が嘘とは思えなかった。何せ、彼は自分から嘘をつくようなタイプではない。──だとするのなら、本当に克己は、主催者の打倒と同時に、クルーの保護までも考えているのだろうか。 「克己さん……。やっぱり、あなたにも、咲き続いているんですね──こころの花が」 「フン……ッ、知らねえな。俺は、お前らが手こずっているこの話の黒幕をさっさと倒したいだけだ」 つぼみだけは克己の本来の性格が優しい人間であり、それが蘇生によって改変されてしまった事を知っている。だから、これが本来の彼なのかもしれない。 克己はゆりを殺した仮面ライダーであったが、それでもつぼみは、克己の罪を憎み、克己の事は憎まず──それどころか、信じたのだ。 「どういう事だよ? こいつら、敵じゃないんだよな……? 協力するって──」 事情を詳しく知らず、翔太郎への信頼地が最も高い杏子は少々首を傾けた。 だが、そんな混乱する杏子と異なり、これまで疑いを深めるばかりだった翔太郎の感情は纏まりがついた。そんな様子を見て、少しばかり考えを改めたのだろう。 確かに、プリキュアの想いの力や、花のエネルギーは、大道克己をかつての彼に近づけるほどの力を有していたと。 それならば、翔太郎はこれまでで初めて、照井や克己と共同戦線を張る事になるわけだ。 そんな不思議な状況を飲み込んだ彼は、誰にも聞こえぬよう呟いた。 「──エターナル。やっぱり、お前も、風都の仮面ライダー4号だったのか……」 ◆ 同時刻。 艦内は、そこがつい数分前まで広く果てない廊下であったのが嘘であるかのように、不気味な怪物たちに埋め尽くされていた。 これが、前線の現状であった。 「──ネフィリムフィスト!」 目の前の再生怪人の顎に向け、その拳を叩きつけるコロナ・ティミルは、もはや疲弊しきっている。体全体でアッパーを叩きこんでいるというより、打撃点である拳のみを固めて、残りの身体全体は成されるがままに動かしているかのようだった。 ふらふらと揺らめく体で、それでも真っ直ぐに敵の顎先を捕え、何とか目の前の怪人──ギリザメスを撃退した。倒されたギリザメスは、泡になって消えていく。 「はぁ……はぁ……」 彼女や、リオ・ウィズリーや、ノーヴェ・ナカジマは──そして、インターミドルで彼女たちと激突したストライクアーツ選手たちは、殆どが肩で息をするような状態であった。 相対するのは、狼男やイカデビル、ガラガランダやヒルカメレオンといった、かつて本郷猛と一文字隼人が戦った悪の組織「ショッカー」「ゲルショッカー」の改造人間と、同一の姿をした怪人たちであった。それに比して弱体化しているとはいえ、果てもなく湧いて来る怪人軍団の群れには多勢に無勢である。 「ヴィヴィオが……まだ頑張ってるんだ……! 私だって!」 それでも、コロナたちは諦めない。 此処にいるという事は、ヴィヴィオたちが受けた苦しみや痛みよりもずっと恵まれた想いをしているという事なのだから。 コロナは、元を辿れば、友達であるヴィヴィオに付き添うようにしてストライクアーツを始めた。──それゆえに、彼女に常に近い所にいる事で、彼女と友達であり続けようとしてきたのだ。 まだ彼女に追いつこうと言う意思は枯れていない。 「……そうだよ、コロナ……私たちは私たちに出来る事を全力でやる! ここに帰って来られなかった人が守れなかった世界は、私たちが叶える!」 コロナと背中を合わせ、お互いに支え合うようにして、立ち上がる小さな陰はリオであった。そんなリオも目の前の怪人──ザンジオーに向けて、力なく何歩か走りだし、両掌から、重たい一撃を放った。 「絶招 織炎虎砲!」 リオも、パワーに関しては、あの響良牙に匹敵するレベルであった。──先ほど、良牙のもとで鍛錬した際も、とりわけ彼女はその才能を良牙に褒められたほどである。 魔力消費が膨大な一撃が、ショッカー怪人ザンジオーの身体をぶち抜き、彼の身体も泡へと消し去った。 それでもまだ彼女たちの前に死人のように群がる怪人たちは彼女たちに向かってくる。 「「強くなるんだ……どこまでだって!」」 ──あのモニターによって、ヴィヴィオやアインハルトが巻き込まれた殺し合いを目の当りにした時、コロナとリオは何を想っただろう。 二人の痛みを分かってあげられるにはどのようにすればいいのか。こうして黙って見ている事しか出来ないなんて、友達としてそれで良いのだろうか。 ──そう思ったに違いない。 だが、現実には彼女たちはあまりにも無力だった。彼女たちだけでなく、その偉大な先輩たちも。世界中の人たちも。六十六名の参加者と世界を救う術が、人々にはなかった。現場に行きつく術すらなかった。 そして、人々は今も彼女たちと共にベリアルを倒しに行く事さえできないまま管理に屈しかねない状況に陥っている。 ならば、せめて彼女たちに道を開く為に、精一杯に自分の力を振り絞ってみせようと。 二人は──いや、この艦の乗組員は、須らくそう思っていた。 だからせめて、何かヴィヴィオたちを助けられる力を学びたい。──そうして、良牙から格闘を習おうとしたコロナとリオであった。 そんな二人も結局は、その欠片も習得する事ができなかったのだが。 「このくらいの敵……ッ!」 シオマネキングを中心に群がるショッカー怪人たちの姿を、リオたちは固い意志の籠った瞳で睨んだ。幸いにもまだ味方側に死人は出ていないが、ここから先はそれさえ覚悟をしなければならないかもしれない。 自分たちに出来るのはヴィヴィオたちが辿り着くまでの時間稼ぎに過ぎないのだ。 この区域にいる残りのショッカー怪人の数は何十体か。──魔力が保たず、別の区域もそれぞれ手一杯で援護も期待できない。敵一体につき消費される魔力を考えれば、このままここで勝ち進める可能性は高いとは言えなかった。 ──しかし、そう考えた直後、ある一声が彼女たちの形成を逆転させたのだ。 「────猛虎高飛車!!!」 そんな叫びが廊下に反響すると共に、廊下が不思議な光に包まれ、ショッカー怪人の断末魔がコロナたちの耳朶を打った。 いやはや、聞き取れた声は、良牙が教えようとした技の派生型と全く同じである。良牙はそれを教えなかったが、おそらくその技は滅多な事では出ないのだろう。 そんな技を使えそうなのは良牙くらいしかいないのだが、それは良牙ではない。 もう一度、技の名前と声を二人は頭の中で反芻した。 ──猛虎高飛車。 あの、獅子咆哮弾と対局に位置する「強気」の技だ。気の持ちようによって変化する技ではあるものの、この技を使った男は、本来なら、あのヴィヴィオと行動していた男・ただ一人のはず──。 「誰……!?」 「味方か!?」 ショッカー怪人たちも、周囲をきょろきょろと見回し始めた。増援がやってくるはずもない。──来るとすれば、それはあの殺し合いの生還者だろう。 だとすれば彼らにとってはむしろ好都合だが、現実は違った。 「──おい、お前ら……ヴィヴィオの友だちか!?」 遠くから響いて来る男の声は、コロナとリオにそう問いかけていた。 どこか聞き覚えがある声に、二人は固まる。確かにそれが何者なのかは二人とも、察しがついていた。 ──いや……だが、やはり、そんなはずがない。 彼女たちはそれをモニター越しにしか見ていなかったが、彼は少なくとももう、死んでいるのだから。 それでも、それは幻聴と呼ぶには、あまりにもはっきりしすぎていた。言葉は続いていく。 「なら、ヴィヴィオに伝えとけ。……こんなに強くて良い友だちがいれば、お前はまだまだ、どこまでも強くなれるってなっ!」 群れの向こう側からショッカー怪人を格闘技で撃退しながら近づいて来る声は、だんだん姿まで伴ってきた。 見えてくるのは、揺れる黒いおさげ髪──そして、真っ赤なチャイナ服。 それらが微かにでも見え始めた時、確信する。その場にいた者たちの間に呆気に取られたような表情が見え始め、そして、誰もが理解する。 それが一体、誰なのかを──。 「──それに、お前らもだぜ」 男の顔は、はっきりと彼女たちの瞳に映る。 彼には、「ロストロギア」の反応が強く出ていたのだが──誰もそんな事を気にしなかった。それは確かに、味方そのものであったからだ。 「早乙女乱馬、さん……?」 コロナとリオの前に現れた男は、頷いた。 あの殺し合いの場において、ヴィヴィオやアインハルトを保護し、彼女たちに幾つも助言した一人。 そして、参加者たちを苦しめたン・ダグバ・ゼバに、煮え湯を飲ませた強き男であった。 「よしっ、お前ら、まだ元気あるよな? 元気があんなら、まだまだ行くぞ!」 死者の手助けに二人も驚愕したのだが、同じ事がほとんど同時に、艦内のあらゆる場所でも起こり始めていた。 ──クルーと怪人たちとの戦いに、死者が割り込んでくる現象だ。 それは、『闇の欠片』によって引きだされた殺し合いの記憶そのものであるのだが、確かにその意志は大道克己の言った通り、艦にいる者たちの援護を始めているのだ。 仇なす者もいるとはいえ──この艦を守ろうとする者の方が多数であった。 それが多くの参加者たちの本質。──如何に多くの邪心の塊が湧き出で続けたとしても、折れる事なく戦い続ける者は必ずどこかにいる。 ◆ はやてたち面々が今から向かうのは、時空移動システムを司るアカルンと転送装置のある転送室だ。 今は、アカルンがそのシステムを司っており、サウラーが主にその場を管理している。夜や開いた時間は、ウエスターも共に交代で警護に当たっていたため、今は、二人のいずれか──あるいは二人のいずれもによって守られているのだろう。 敵側も、特に強く結界が張られたあのエリアにはまだ立ち入れていないらしい。……が、敵も同じようにして、全てを制御する部屋を探し彷徨っている。 それより早く転送室に辿り着き、ベリアルの世界の座標まで彼らを一刻も早く転送する準備をせねばならなかった。──戦闘の為の一通りの装備は、その近くに設置されている。 「……あともう少し!」 はやてが言った。 思いの外早くそんな言葉が出てきたので、彼らは少々安心し、それと同時に、それだけ早くベリアルとの決戦の地に向かわなければならないという事実に気づいた。休息は充分に取っており、いずれの身体にも別段調子の悪い所はない。 しかし、問題は、心の準備の話であった。──まだ一日猶予があると思っていたのに。 「もう少し、か……」 そんなやり切れない想いの籠った言葉を翔太郎が呟いた。それが誰の言葉であったのかはどうでもいい事だ。結局のところ、誰しもが憂いを持っていた。 勝利への自信が全くないわけではないが、たとえそれでも──ここをこんな状態で任さねばならない事には少々抵抗もある。 そんな気持ちを察してか、闇の欠片の仮面ライダーアクセルが翔太郎の方を見つめた。 「左、これからお前たちが去った後のこの艦は、俺たちが守る。……安心してくれ」 「照井……」 照井竜にこんな言葉をかけられるのが、かなり久しぶりに感じた。 結局、あの変身ロワイアルでは会えず終いである。──それだけ、あの殺し合いに強敵が多かったという事でもあろう。 少しでも運命が違えば、死んだのは翔太郎であったかもしれない。 「これが俺の──照井竜の、仮面ライダーとしての最後の仕事になるな。ここで戦う者たちは、全員がその覚悟を持ち、お前たちに託すつもりで戦っているんだ……。きっと、俺たちは、己の持つ最後の使命を果たすつもりでここに呼ばれた」 「……だけど、お前には仮面ライダー以外にも……照井竜としてもあるだろ」 「照井竜、として……か。ならば──所長には、一刻も早く『次の相手』を見つけるように言ってくれ。出なければ、彼女もすぐに『手遅れ』になる」 アクセルに対して、石堀光彦の変身形態である印象を持つ者がこの場には多かったが、こうして見てみると、石堀に比べればクールながらも穏やかさに満ち溢れたのが照井だった。それというのも、石堀は実質的に、アクセルの力を、人間の能力を強化する兵器程度にしかとどめていなかったからだろう。 見れば、アクセルという無機質なマスクの中にも奇妙な愛嬌が芽生えてくる。石堀の時には全くなかった感覚だ。 不意に、暁が、走りながらも、横からアクセルに訊いた。 「──なあ、照井だっけ? あんたたちはさ、この戦いが終わったら、消えちまうんだろ? このまま大人しく消える気なのか?」 「俺に質問するなッ!」 「……いや、それどうすりゃいいんだよ」 思いの外、辛辣な解答を受け取った暁は、少しばかり心を痛めたようだ。実際のところ、何気ない質問をしたところ、物凄い剣幕でこんな解答が来れば、腹も立つし心も折れる人間が大半だろう。暁も例外ではなかった。 代わって、別の「闇の欠片」が答えた。 「──みんな、大人しく消えるさ。……それが僕達、死人の宿命だ」 ナスカ・ドーパント──園咲霧彦である。 ドーパントでありながら、風都という街を愛した彼は、ひとまずここでベリアルと対立する者たちには善悪問わず、味方をするつもりだ。特に、ヴィヴィオを守る為にも──。 暁の質問にどんな意図があるのかはわからないが、彼らには堪えられる限りの質問を返す事も施せる。 ナスカの様子に悔いはなさそうであったが、ヴィヴィオは前向きになり切れなかった。どこか浮かない顔で告げる。 「……そうですね。いずれにせよ、闇の欠片は元々、そんなに長くは再生できません。……だから、霧彦さんたちとももうすぐ……」 そんなヴィヴィオを見て、ナスカはこうして再生されるという事が、「二度死ぬ」という事であるのを思い出す事になった。 生きている側からすれば、同じ人間との辛い別れを何度となく経験する事になる。 「すまない。ヴィヴィオちゃん、一度乗り越えた悲しみをもう一度繰り返すような形になってしまって」 「……ううん。私の事はいいんです。確かに悲しいけど、折角、一日でも霧彦さんたちと会えるなら、もっと良い時に会いたかったなって」 ヴィヴィオらしい言葉だと、ナスカは受け取った。──かつて、彼女の母の死を告げるのを先延ばしにしようとした事があったが、もしかすればそれこそ失策だったかもしれない。 彼女は大人顔負けの強さを持っている。あらゆる苦難に挫けない鉄の心だ。そんな純粋さは、簡単に歪められる物ではないらしい。 そんな二人のやり取りに変わってしまったが、元々ナスカにそれを問うたのは暁だ。 「……で、そうは言うけど、あんたもさ、このまま生きてやりたい事とかないわけ?」 「そんな事くらい、山ほどある。心残りな妹もいるんだ。──だが、残念ながら僕は生きていない。死ぬのは、あれで二度……だから、今こうしてここにいる事が充分奇跡のような物さ。償いだけはするつもりだ」 一度は冴子の裏切りに、もう一度はガドルとの戦いに敗れ死んだ。 死後、というのは思いの外、居心地が良くもあり、悪くもある果てなのだが、それについて生者に教える事は何もない。 強いて言えば、ヴィヴィオや杏子は、それぞれ別の形で近い物を感じた事があったが。 「……俺は三度目らしいがな」 「私も三度目! NEVERの勝ちね! 霧彦ちゃん!」 エターナルとルナ・ドーパントが横から付け加えた。 ナスカも、この二人の死人たちの言葉には、返す言葉もなかった。ただ、何となくこの面識もない連中に負けた事が悔しく感じられた。 そんな様子を察してか、花咲つぼみがナスカをフォローする。 「……あの、霧彦さん、落ち込まないでください。『二度ある事は三度ある』と言うものですから……きっと、霧彦さんももう一回くらい」 「彼らに張り合ったって嬉しくはない!」 と、ナスカがつぼみの天然さに突っ込んだその時──警告音が、突然、艦内に響くのを止めた。ぶつっ、と「音が切れる音」がした。 何分も鳴り続けたところで、結局はその場の音声を捕えづらくするだけと判断されたのだろうか。──だとするなら、音声の遮断は、その時は、英断だろう。流石に長く音が鳴りすぎている。 この音の連鎖と赤色のネオンは、却って人を不安にし、戦闘音を聞き逃させる。意識して、会話のボリュームも上げなければならないので敵に気づかれるリスクも上がる。 しかし、それはそんな配慮の為に鳴りやんだのではないと──次の瞬間、彼らは悟った。 『ドンッッッ!!!!!!!』 放送機能を司るオペレーターが待機しているはずのブリッジで爆音が起きたであろう事は、その場の音声を中継する無数のスピーカーによって、艦内に同時に認識される事態となった。 「──ッッ!? な、なんだッ!?」 今──確かに、予想だにしないハプニングが起きた実感があった。 ブリッジに攻撃を受けたという事は、敵の侵攻はかなり深く進んでいるはずだ。それを想い、彼らも黙りこくる。 あの場にいるのはクロノ以下、数名の戦闘要員と残りは魔術戦闘にたけているわけではない者たちだ。その周囲を屈強な者たちが厳重にガードしているとはいえ、奇襲を相手に上手にフォーメーションを組む事は出来ず、結果、こうして艦長の居場所までもが襲撃される事になったという事らしい。 「まずいな……! あそこが狙われたという事は、艦長が危ない!」 「クロノ艦長……!」 クロノ・ハラオウン艦長は勿論の事、この艦そのものの危機である。 だが、そんな心配と同時に、近くでもまた轟音が鳴り始めた。敵の魔の手は、着々とこの艦いっぱいに広がってきているらしい。それはもはや充満する煙のようだった。どこを塞いでも抑えがきかず、微かな隙間で余所へとなだれ込んでいく。 今こうして、警告音が鳴り止んだ時こそ、その実感は強まってくる──彼らの鼓膜を通して聞こえた轟音は、確実に敵襲による物だろう。 「……艦長室が狙われた……? じゃあ……マズイ……」 そして、誰よりその瞬間に危機感と絶望感に打ちひしがれたのは八神はやてであった。 彼女の顔色がその瞬間に大分変わったようである。──膝から崩れてもおかしくないような表情だった。それを辛うじて抑えながらも、胸の中に広がった絶望で、実際にはあまり膝を折ったのとあまり変わらないような状態である。 「どうしたんだ……?」 「──……これから向かう場所で転送をするにも、ブリッジの指揮と許可が必要や。それが出来なくなる。つまり、これから転送室に辿り着いても、ベリアルの世界には行けない」 ブリッジの襲撃。──それは、ベリアルの世界に辿り着く為に重ねて揃わなければならない条件が一つ切り崩されたという事である。生還者、ブリッジ、アカルンの三つの存在が同時に成り立たなければベリアルの世界には行けない。 並行世界に渡る手段は複数存在するが、たとえば、ディケイドのようにあの世界への耐性のない者は、そもそもオーロラをあの世界に繋ぐ事すらできないからだ。 敵は、確実にベリアルを倒す為の手段を封殺しにかかっているのだろう。作戦としては、その三つの要を制圧すべきなのは当然であった。 「──じゃあ、ここで終わりなのか?」 「勿論、ブリッジが襲撃を受けていた場合の話や。ただ、限りなく危険な状態になってる」 「襲撃を受けていた場合って……だって、あの音……」 「──まだ、わからん」 と、はやては言うが、ブリッジ周辺の警護は充分だったはずだ。 それこそ、ブリッジの内部に入られる事を想定しえないほどに固くガードされている。そもそも、指揮を司る場に敵が侵入するというのは敗北に近い状況であるゆえ、最も警備が固められていたのは、「拠点の周囲」だ。 拠点の警戒体勢は、それ以下であり、周囲を突破された以上は、時間の問題と言えよう。 「……みんなを信じましょう」 ヴィヴィオが口を開いた。 彼女は、この場一帯の沈んだ空気の中でも、あまり顔色を変えていない方だ。それは、危機感がないからというわけではない。 ブリッジにいるクロノたちへの心配も確かに強いのだが、同時に可能性も考えている。 全員が、ヴィヴィオに視線を集中した。 「──襲撃を受けたとしても、今の艦内放送で、この艦にいる人たちはみんな危機的状況には気が付いたはずです。それなら、霧彦さんみたいな人たちがブリッジに向かっているかもしれません」 「まあ、確かに……」 「特に、この艦に元々いた人たちと接触した人がいたら、ブリッジの位置も知る事が出来ます。クロノさんたちに増援が来る可能性もないはずがありません。──それに、ブリッジには外部世界の人たち(門矢士のようにパラレルワールドを移動できる者の事)に連絡する機器もあるはずですから、そちらの助けを呼んでいる可能性もあります」 それに関しては気づいた者もいたが、楽観的な発想の一部であったので、あくまでその可能性もあるとしか言えなかった。だが、それを信じる自信を持てるのもまた、彼女の性格の一部なのかもしれない。 それとも、ここにいるはやてが長い任務のストレスやプレッシャーから、司令にあるまじきネガティブを少し強めに抱き始めているのかもしれないが、実際のところは、ブリッジとの連絡が途絶えた現状、不明だと言えた。 『──おい、零! ここで立ち止まってる場合じゃない、後ろからとてつもない邪気が来るぞっ!』 その時、不意にザルバの叫びが木霊した。 その声は、呼びかけられた零だけではなく、その場にいた全員の耳に入り、瞬時に各人を我に返し、警戒させた。 「──何者だっ!?」 怒気の強い声で問うたのは、零である。 見れば──。 「──ッ!?」 ──次の瞬間、彼らの周囲を奇妙な「毬」が飛び交っていく。 それは、不規則に壁に跳ね返り、当たった場所で爆ぜて衝撃を与え続けた。 不可思議なのは、爆発を起こしても毬は消えず、尚も次の地点まで跳ね返り、そこで再び爆発を起こすという事だった。 つまり、これは敵方の爆弾だ。ここにいる人間を狙ったのかもしれない。 「くっ……! 何て事しやがる、こんな時に……っ!」 零が叫んだ。 奇妙な術の使い手の突然の奇襲に、はやてが咄嗟に防御壁を張った。 その壁が張られるよりも前に、零が瞬足で駆けだす。 と、同時に、剣を懐から抜き出し、毬をソウルメタルの剣で斬り裂いた──。空中で半分に分かたれた毬が爆発した。 爆弾を斬り、その爆発さえも回避するという──魔戒騎士ならではの荒業だ。 「ほっほっほっ……」 その直後、物陰から男女二人の怪人が姿を現したのだった。──そして、やはり、彼らは、「ロストロギア」の反応を有していた。 「ほう、お見事……。どうやら、あんたさん達があの殺し合いの生還者のようですな。……ようやく見つかりました」 「私たちを差し置いて生還した──というのは、万事に値する罪ね。さて、アクマロくん。どう料理しようかしら」 二体の怪人には、いずれも見覚えがあった。多くは、モニターやデータ上でだったが、インテリジェントデバイスたちはその怪物を知っていた。 レイジングハートは、二人を見て強い嫌悪の念を示す。 「ノーザ……! それに、アクマロ……!」 他ならぬ高町なのはを殺害したノーザと筋殻アクマロの二人だ。 ゲームの序盤において、スバル・ナカジマをソレワターセに変える事で猛威を振るった残虐な二人は、こうして記憶をデータとして再変換しても尚、コンビで行動しているらしい。 ──これが闇の欠片の、負の部分だ。親しい死者との再会と同時に、敵との再会までも許してしまう。 そして、このアクマロは、蘇ってしばらくして、どうやらこちらの姿を見つけて、後ろから追い、あのように奇襲をしかけてきたのである。 何より、彼らが翔太郎たちの姿を見つけられたのは、ただの勘ではなかったらしい事も、次の瞬間に明かされる事になった。 空がないというのに不気味な白い雪が降り注ぎ、一人の怪人が更にそこへ歩きだす。 「やはり、私の勘に狂いはなかったようですね。……人の集まっていないところほど、大物が釣れる。──アクマロさん、良い料理の仕方を期待しますよ」 ──ウェザー・ドーパントである。 「貴様は……井坂ッ! やはり貴様も地獄から迷い出たかッ!」 彼もまた、アクマロに加担したらしい。そして、おそらくは──メモリの持ち主がどこにいるのか、それを彼は何となく察知したのであろう。良牙が持つT2ガイアメモリの一つ『WEATHER』の運命が彼と引きあったに違いない。 「ノーザさんも井坂さんも、気を急いているようですな。……しかし、こやつらの料理の方法ですか。そんな物は知りませんが……ただ、出来上がる物──彼らが行きつく場所が何かだけは考えておきましょう」 ……彼ら三名のような真正の外道がエターナルの側につき、ベリアルの退治を願うという事は到底ありえない話である。 言うならば、死んでしまった後の彼らの目的は、自分と同じ地獄に生者を引きずりこむという事なのだから。「馬鹿は死ななきゃ治らない」というのは、全くの出鱈目であると、こうして証明されたわけだ。 アクマロは、ノーザとウェザーの期待に、ニタリと笑いながら返した。 「そう、勿論……彼らの行き場は、ノーザさんや井坂さんと同じ。地獄の苦しみを与えた上で、本当の地獄に落ちてもらいましょう!」 「オイオイ。……地獄にはてめえらはいらねえぜ」 同じく地獄を名乗る者として、エターナルはアクマロの前に出た。──地獄を語ったからには、エターナルが自ら対峙せねばならないと思ったのだろう。 どうやら、彼はアクマロとノーザを止めにかかるつもりらしい。それに並ぶようにして、ルナやアクセルやナスカも前に出る。 「井坂。……遂に本物の化け物どもにまで魂を売ったか! ならば遠慮はしない!」 アクセルは、仇敵のウェザーを睨んだ。 アクマロ、ノーザ、ウェザーの三体の強敵は、あくまでも生還者を地獄に引きずり込もうという魂胆らしい。──中でも、唯一この中で人間である井坂の姿に、アクセルは果てのない怒りを覚える。 これまでも非人道的ともいえる実験ばかりを繰り返してきた井坂であった。しかし、死して尚、その振る舞いが常軌を逸しているとは思わなかったのだろう。常々、照井の人物評の下を行く行動ばかりを取る男だ。 「──さて、そういう事だ。彼らは僕達に任せて先に行きたまえ、仮面ライダーくん」 「……霧彦」 「その代わり、ヴィヴィオちゃんたちは君に任せた。君が黒幕の陰謀を潰し、僕たちの故郷に再び、良い風が吹く事を祈ろう」 「……当たり前だ。風都は俺たちの庭だぜ」 ナスカは、それだけ聞いて、少し笑うと、その背にナスカウイングを開いた。その手に固くナスカブレードを握る。 「じゃあ、行くわよっ! ……あ、忠告しておくと、こう見えても私、──オバサンにも厳しいわよっ!」 「オバ……何よ、オカマのくせに!! トンデモない事言ってくれたわね!!」 「──あんたも今、言ってはならない事を言ったわね! ムッキィィィィィィ!!! これはもう、あの子に変わって、精一杯頑張って、このオバサンをブチ殺すッッ!!」 ルナの腕がノーザを捕らえる為に伸び、エターナルがエッジを構える。アクセルの姿は青きトライアルのものへと変身する。 先に転送システムの下へと彼らを送らねばならず、その為にもこうした強敵との戦いを彼らは飲んだわけだ。それぞれが目の前の相手と戦っておくべき理由は尽きない──ゆえに、逃げる側と、逃がす側はそれぞれが合意した決闘であった。 レイジングハートが、そんな彼らの姿を見つめながら、──自分に復讐の機会などない事を悟り、告げた。 「──ノーザ、アクマロ……。なのはたちが受けた痛みは、彼らが必ず返します! 無限に後悔しなさい」 「にゃー!」 アスティオンもまた、アインハルトと一緒にいた以上は彼らの事をよく知っていたのだろう。ヴィヴィオの肩の上で眉を顰め、敵の方を威嚇したティオは、全てを彼らに任せる事を誓うのである。 「行きましょう! ──ヴィヴィオの行ったように、きっと彼らのような者たちが最後に世界を守ろうとしていると信じて……!」 レイジングハートの言葉は、重たかった。 そう、出来る事なら、あの時無力であった自分の手で相棒の仇を倒し、彼女に捧げたい。──しかし、それはきっと、仲間がやってくれる。それで良いのだ。 復讐でも、怒りでもなく、ただ、正しいと思える事と守りたい物があれば良い。 「──うん!」 ヴィヴィオたちは頷き、その場に背を向けた。激闘の音が耳に聞こえ始めたが、振り向く事はない。彼らは、全てを闇の欠片で再生された風都の戦士たちに任せ、管理システムへと向かっていくのだ。 いずれまた、──それが『闇の欠片』であったとしても、霧彦たちに必ず出会えるよう祈りながら。 そして、きっと、まだこの艦では彼らのような者が戦い続け、支え続け、──きっと、自分たちに追い風を送ってくれると信じながら。 「……そうやな。ブリッジにもきっと……ああいう人たちが……」 はやてたちは走りだす。 信じるしかない。──そして、信じる根拠は確かにある。 彼らのように、死した者が時に生者の足を引っ張る事もあれば、助ける事もあるのだから。 不幸な未来も時にはあるが、同時に幸福な可能性だって残されているのだから──。 「ノーザにアクマロに井坂……。やっぱり闇の欠片で再生されてる奴らの中にも、簡単にはいかない奴がいるって事か」 「……そうだな、また戦いたくはねえような相手とも殺しあわなきゃならないわけだ」 良牙や翔太郎は、何名かの敵を思い出していた。 ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバ、ダークザギ……おそらくは、この状況でも決して相容れる事のない相手が何人もいる。 それに、共に戦えるのかわからない者たちも──。 良牙が、ふと、一人の「友人」の事を思い出し、その名前を物憂げに呟いた。 「あかねさん……」 「……きっと大丈夫ですよ、良牙さん。あかねさんは最後に本当の自分を取り戻してくれたじゃないですか」 不安そうな良牙を、つぼみが宥めた。 彼女にも、またきっと、今度こそ敵にならずに会える仲間がいると──そう信じながら。 ◆ 時系列順で読む Back BRIGHT STREAM(2)Next BRIGHT STREAM(4) 投下順で読む Back BRIGHT STREAM(2)Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 左翔太郎 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 花咲つぼみ Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 佐倉杏子 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 高町ヴィヴィオ Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) レイジングハート Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 涼村暁 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 響良牙 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 涼邑零 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) ニードル Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 吉良沢優 Next BRIGHT STREAM(4) Back BRIGHT STREAM(2) 美国織莉子 Next BRIGHT STREAM(4)
https://w.atwiki.jp/totustream/pages/18.html
注意事項 「Ustreamのみ」「Livetubeのみ」「ニコ生のみ」などのチェッカー登録も可能です。(登録したいものだけ記入してください。) 既にチェッカー登録されている方の追加登録や変更の申し込みはその旨を明記して下さい。(どの部分を追加登録・変更したいのかわかるようにお願いします。) Ustream・Justin・BlogTV・Livetube・ニコニコ生放送について(同一配信サイトでも配信内容でIDを使い分けている場合など、例えばUstreamを2つとか)複数登録も可能です。 申し込み事項 【配信者名】 配信者名を日本語または英数字で記入してください。 【Ustreamチャンネル名】 Ustreamでの「番組名(Show's name)」を記入してください。 自分の配信ページのURL(http //www.ustream.tv/channel/●●●)の●●●の部分です。 ※チェッカー登録後に「番組名(Show's name)」を変更する場合はこちらにご連絡ください。 【UstreamIRCチャンネル名】 基本的には↑のUstreamチャンネル名の頭に「#」(半角)をつけたものでOKです。 例:revot ⇒ #revot ただし、チャットのチャンネル名を変更したり別のチャットを使用したいのであれば、そちらのチャンネル名を記入してください。 【UstreamチャンネルID】 まず、自分の配信ページ下側の『埋め込み』タブをクリックします。 一番上の『ライブビデオ』のコードの中からcid=●●●●●●●という部分をみつけて、その●●●●●●●(7桁くらいの数字)を記入してください。 【Justinチャンネル名】 JustinのログインIDを記入してください。 【BlogTVチャンネル名】 BlogTVのログインIDを記入してください。 【Livetubeアカウント】 LivetubeのログインIDを記入してください。 【ニコニコミュニティID】 ニコニコミュニティのURLを記入してください。 例:http //com.nicovideo.jp/community/co●●●● 【TwitterID】 TwitterのログインIDを記入して下さい。 【コメント】 あなたの自己紹介(麻雀についても一言)を簡単に記入してください。